歯の食いしばりが歯や歯茎に大きなダメージを与えていることを知っている方は少ないのではないでしょうか。食いしばりは強い力で歯と歯を噛みしめることです。しかし、実は、歯の食いしばりによって虫歯でもないのに歯に痛みや頭痛、顔の形まで変わってしまうことがあるのです。今回は歯の食いしばりによって起こる症状と治療法をお伝えします。ぜひ、参考にしてください。
1.歯の食いしばりとは
食いしばりは上下の歯と歯を合わせて噛みしめることです。歯の食いしばりは歯ぎしりなどと同じように歯や歯茎にとって大きなダメージが加わります。歯と歯は1日に接している時間は食事の時に15分から20分程度で、それ以外は安静空隙(あんせいくうげき)といって1mm程度開けているのが正常です。しかし、食いしばりをする方は1時間から2時間、無意識に大きな力で行うために、歯や顎の痛みなどを訴えることがあります。
2.歯の食いしばりによって起こる症状
2−1.噛むと痛い
食いしばりによって歯の周りにある歯根膜という膜が炎症を起こし、噛むと痛くなります。食いしばりは長時間続くと、歯や歯の周りの組織にダメージを与えます。特に奥歯が噛んで痛い、上も下も左右も痛いなど、場所が特定できず痛みの位置が変わる場合は、虫歯ではなく食いしばりによって痛みが出ている可能性があります。
2−2.歯がしみる
食いしばりによって歯や歯茎にダメージが加わると歯がしみることがあります。食いしばりによって歯の根元や噛む面が削れてきたり、歯に亀裂が入ると歯のしみが強くなります。詳しくは「知覚過敏のすべて/症状・原因・治療法」を参考にしてください。
2−3.歯が痛い
食いしばりによって歯に亀裂が入り、神経が死んでしまうことがあります。食いしばりによって歯に亀裂が入ると、そこから細菌が神経に感染し、死んでしまうことがあります。初期の頃はしみたり、多少噛んでも痛い程度で、その後強い痛みが出ることがあります。ただし、歯医者のレントゲンでは小さな亀裂を確認することはできないため、急に痛みが出ることがあります。
2−4.歯のセラミックが割れる
食いしばりによって歯に強い力がかかると歯のセラミックの詰め物やかぶせものが割れることがあります。セラミックは噛み合う歯を傷つけないように、歯と同じか少し固めのセラミックを使うことが多いです。食いしばりがあると歯に強い力が加わり、セラミックが割れたり欠けたりします。しかし、あまり固いセラミックを使うと噛み合う歯が欠けたり、歯を支えている骨にダメージが加わることがあるため、食いしばり自体をコントロールする必要があります。
2−5.顎が痛い
食いしばりによって顎関節症になり顎が痛くなることがあります。顎は左右の関節の部分だけで頭の骨とつながっています。食いしばりによって顎の関節に力が加わると顎の関節にある軟骨の関節円板(かんせつえんばん)がずれたり、穴が空いたり、変形したりして顎関節症になり顎が痛くなります。
2−6.歯が割れる
食いしばりによって歯に大きな力がかかると、歯が割れてしまうことがあります。特に神経のない歯は水分が減っていきもろく、割れやすくなっています。亀裂から細菌が入り、歯茎が腫れたり、口臭が出てきます。大きく割れてしまった場合は抜歯をする必要があります。また、神経が残っている場合も割れることがあり、この時は強い痛みが出ることがあります。詳しくは「歯が割れた!歯根破折の原因と治療法」を参考にしてください。
2−7.歯茎が痩せる
食いしばりにより歯を支えている骨に負担がかかり、歯茎が痩せてしまうことがあります。歯周病や歯茎が腫れている方は、食いしばりの力によって歯を支えている骨の溶ける進行が早くなり、歯茎が痩せやすくなります。デンタルフロスや定期的な歯のメンテナンスによって、歯茎を強くしておく必要があります。詳しくは「下がった歯茎や骨を再生させる方法」を参考にしてください。
2−8.肩がこる
食いしばりのある方は肩や首が凝りやすくなります。食いしばりに使う筋肉は顎から首から肩にかけて多くの筋肉がつながっています。食いしばることによって筋肉が緊張し、疲労感がたまり、肩こりがなかなか取れないことがあります。
2−9.偏頭痛
食いしばりの時に使う筋肉には、顎から頭の横に広がっている側頭筋(そくとうきん)という筋肉があります。食いしばりによって筋肉が緊張すると側頭筋によって頭が締め付けられるような偏頭痛が起こることがあります。
2−10.骨隆起(こつりゅうき)
食いしばりがある方は顎の骨に歪む力が加わり、歪む力が集中する所に骨のこぶである骨隆起ができることがあります。骨隆起自体は悪いものではないので取る必要はありませんが、入れ歯や発音に障害が出るようになると切除する場合があります。 詳しくは「歯茎や顎にできた骨隆起の原因/そのままでいいか切除するのか?」を参考にしてください。
2−11.顔が大きくなる
食いしばりの時に使う筋肉は顔の周りに付いている筋肉です。食いしばりがある方はこの筋肉が発達し、顔がおおきくみえてしまうことがあります。もちろんこの筋肉は生きていくには重要な筋肉の為、ある程度は力が必要です。しかし、食いしばりを続けていくと異常に発達し、筋肉や骨を成長させて顔を大きく見せてしまうことがあります。
3.歯の食いしばりの治療法
3−1.自己暗示療法
食いしばりは何かに集中しているときに起こることがあるので、自分で意識をして歯と歯を合わせないように、食いしばらないように常に暗示をかけるようにします。意識し続けることによって、寝ているときの無意識化の時も減ってくる傾向にあります。
3−2.ストレスの発散
食いしばりはストレスによって起こることがあります。特に環境が変わった時、引越しや入学、転職などや近親者が亡くなるなど大きなストレスが加わった時などに食いしばりが出る方がいます。そのため季節的には5、6月くらいに歯の異常を訴える方が増えます。
3−3.マウスピース
夜寝るときに無意識に食いしばりがある方に使うマウスピースで、ナイトガードともいいます。無意識のときに食いしばる力は強く、また食いしばりの時間も長いため、歯や歯茎に対するダメージが大きくなります。そのためマウスピースで力を分散させてダメージを減らします。保険診療3割負担の方で5,000円程度です。詳しくは「歯ぎしりによって起こる怖い出来事/マウスピースがあなたの歯を守ってくれる」を参考にしてください。
3−4.ボツリヌス菌注射
ボツリヌス菌が作り出すタンパク質の作用によって筋肉の緊張を和らげることができ、食いしばりをする際力が入らないようにします。ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので問題はありません。ただし、効果は数ヶ月のため定期的に注射する必要があります。
4.子供にも多い食いしばりによる歯の痛み
乳歯列の子供にも食いしばりは起こります。原因は不明ですが食事の時などに痛みを訴えることがあります。歯医者でレントゲンを撮影しても虫歯などは見つからず、痛みも出たり引いたりすることがあります。食いしばりによって乳歯に歯の磨り減りがある場合もありますが、見た目にはわからない場合もあります。基本的には様子を見ますが、あまり痛みを強く訴える場合は痛み止めをのんでもらいます。
参考記事
おすすめクリニック
おかざき歯科クリニックの基本情報
ホームページ http://www.okazaki-dental.com
電話番号 045-828-6480
住所 神奈川県横浜市戸塚区品濃町1835ー29コーポレート東戸塚
診療時間 月・火・水・金 9:30~13:00 14:30~19:00
土 9:00~13:00 14:00~18:00
木・日・祝日:休診日
院長経歴
岡崎 弘典
日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任
まとめ
食いしばりは虫歯や歯周病でなくても歯に痛みを与えます。
食いしばりは歯や歯茎に大きなダメージを与えます。
食いしばりを防止するにはストレスの解消とマウスピースが必要になります。