顎のずれ!顎変形症で知っておきたい10の知識と治療の流れ

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

受け口やでっ歯などの顎のずれで噛み合わせが悪く悩んでいる方も多いのではないでしょうか。歯列矯正だけでは治らない噛み合わせの方を顎変形症(がくへんけいしょう)といいます。しかし、実は顎変形症の方は歯列矯正と顎の手術によってきれいな歯並びやバランスのとれた顔の形に改善できるのです。それも保険診療で行うことができるのです。驚きますよね。今回は顎変形症で知っておきたい10の知識と治療の流れをお伝えします。ぜひ参考にしてください。

1.顎変形症(がくへんけいしょう)とは

極端な受け口や出っ歯などで顎の大きなずれによって噛み合わせが悪くなり、歯列矯正だけでは治療が難しい場合に診断されるのが顎変形症という病名です。大きな顎のずれのある悪い歯並びを歯列矯正だけで治すと歯や歯茎に負担がかかります。そのため歯列矯正と顎の位置を下げたり、出したりする外科処置の両方を行って噛み合せを治します。顎のずれを治す外科処置を一緒に行うことによって歯並びだけでなく、変形している顎の形を治すことができ、バランスのとれた歯並びや顔の形にすることができます。

2.顎変形症で知っておきたい10の知識

2−1.歯並びだけでなく顔の形も改善される

顎変形症の治療では悪い歯並びだけでなく、外科的に顎の位置を変化させるために顔の形も改善されます。顎変形症は顎の位置のズレによって噛み合わせが悪くなっています。顎の位置を正しい位置に改善することによって顔の歪みやズレを改善し、バランスのとれた顔と噛み合わせになります。

2−2.歯や歯茎に負担をかけない

顎変形症によって顎の大きなズレがある噛み合わせを歯列矯正だけで治療を行うと歯や歯茎に負担がかかります。歯は顎の骨や歯茎の中だけでしか動かすことができません。無理に歯列矯正だけで治療を行うと歯茎が下がったり、歯の神経が死んでしまい歯の寿命が短くなってしまいます。顎の手術を行うことによって歯を無理に動かさずに歯並びを治すことができます。詳しくは「あれ、歯が伸びた?歯茎が下がる7つの原因と治療法」を参考にしてください。

2−3.顎変形症は保険診療で行える

顎変形症の治療は歯列矯正と外科処置共に保険診療で行うことができます。国によって指定された医療機関で顎変形症と診断され、治療を行えば、歯列矯正でかかる費用と外科処置に伴う入院費などは保険診療の負担割合(多くは3割)で治療を行うことができます。費用は保険診療で3割負担の場合矯正の料金が20〜30万円程度、手術費用が10万円程度で合計すると30万〜40万円程度です。

2−4.受け口でも歯列矯正だけでは保険は効かない

同じような顎がズレている噛み合わせでも矯正治療だけで治す場合は保険診療で行うことができません。噛み合わせの状況によっては外科処置をせず、歯列矯正だけで治せる場合もあります。その場合は保険が適応されないために、事前に矯正治療のみで治療を行うのか、顎変形症の歯列矯正と外科処置を行って治療を進めるのか矯正医や口腔外科医と相談する必要があります。詳しくは「受け口の悩み解消します。きれいに治る矯正治療」を参考にしてください。

2−5.自分自身では決められない

歯列矯正を保険診療で行いたいために顎変形症の歯列矯正と外科処置を自分で決めることはできません。あくまでも矯正医や口腔外科医との相談の上、決める必要があります。しかし、歯列矯正単独でも顎変形症の治療でもどちらも可能という場合は矯正医と相談の上、自分の意見が尊重される場合があります。

2−6.外科処置の時には入院が必要

顎変形症の外科処置をする時には入院が必要になります。10日前後の入院期間が必要となりますので、仕事をされている方は休みを取る必要があります。また手術は全身麻酔下で行われますので、手術中は痛みを感じず処置が行われます。

2−7.手術前後の歯列矯正

顎変形症の治療は手術前に行われる術前矯正と、手術後に行われる術後矯正が必要になります。術前矯正では手術後にどのような噛み合わせになるのかシュミレーションをしながら歯列矯正を行います。そのため、術前矯正中は今までの噛み合わせより一時的にズレが大きくなります。術後矯正は手術後に治った噛み合わせの微調整を行います。歯の磨り減りの位置や細かなズレを歯列矯正や噛み合せを調整しながら、安定した噛み合せにしていきます。

2−8.顎変形症の治療期間

治療期間は術前矯正、手術、術後矯正で3〜4年程度です。歯を抜歯するかしないかや、親知らずや顎の移動距離によって期間は変わります。術前矯正1.5年、手術、術後矯正1.5年程度です。治療後は噛み合わせの後戻りを防ぐためにリテーナーという保定装置(ほていそうち)を使う必要があります。2年ぐらいの装着が必要でその後は徐々に外していきます。

2−9.顎変形症の治療は成長が止まってから

下顎の成長は体が成長する間、成長が続きます。そのため成長期に顎変形症の治療を行ってしまうと治療後後戻りしてしまうことがあります。額変形症の治療、特に手術は成長が完全に止まってから行います。

2−10.美容整形外科との違い

顎の表面の形や凹凸を変えるだけであれば美容整形外科で骨を足したり、削ったりすることは可能です。しかし、噛み合わせの変化が出るような場合、顎変形症の治療を行わなければ噛めなくなり、顎の痛みや体の不調が出てしまう可能性があります。

3.顎変形症の治療の流れ

3−1.治療前の状態

見た目でもわかるように受け口で顎が前に出ています。歯列矯正だけでも改善できるかもしれませんが、歯や歯茎、顔の形を考えて顎変形症の治療を行うことになりました。

顎変形症治療前1

顎変形症治療前2

3−2.矯正装置の装着

歯の表面にブラケットという矯正器具を接着剤でつけています。原則として使用するブラケットは写真のように金属製のものが耐久性に優れており一般的ですが、審美性のある透明ブラケットを使用する例もあるようです。詳しくは担当医療機関でお尋ねください。

顎変形症ボンディング

顎変形症ボンディング2

3−3.手術前の噛み合わせ

手術前の噛み合わせの状態は治療前の状態より受け口が大きくなっています。手術後に噛み合うようにシュミレーションをして手術前の噛み合わせの状態にしています。

顎変形症手術前1

顎変形症手術前2

3−4.手術

手術は10日前後の入院をして行います。顎の位置を正しい場所にチタンのプレートとネジで固定します。チタンの固定装置は顎が固まってから取る場合もそのままにしておく場合もあります。

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3−5.手術後の噛み合わせ

受け口だった噛み合わせが正常な噛み合わせに治っています。手術後噛み合わせが安定するまでワイヤーやゴムで顎を固定することもあります。

顎変形症手術後1

顎変形症手術後2

3−6.治療後の状態

噛み合わせが治り、きれいな歯並びになっています。顎の位置も改善され顔がよりバランスのとれた状態になっています。ブラケット装置を外した後は保定装置を使い、治療した歯並びが戻らないように安定させます。詳しくは「今からが重要!矯正後のリテーナーが必要な理由/使用法と期間」を参考にしてください。

顎変形症治療後1

顎変形症治療後2

まとめ

顎変形症の治療は手術を伴う治療のため体には負担がかかります。しかし、手術を行わないで顎のずれを治すよりも歯が生えている土台である顎の位置を正しい位置に変えることができるために、歯並びや顔の形はきれいになります。悩まれている方は一度顎変形症の治療を行っている矯正科で相談されることをおすすめします。

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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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