旅行や外出中に前歯の差し歯が急に取れてしまうと困りますよね。前歯の差し歯は前触れもなく急に取れることがあります。すぐに歯医者に行ければいいのですが、旅行中の場合はどこにいっていいのかわからない場合も多いことでしょう。マスクを付けて旅行しても楽しみは半減してしまいます。今回は外出先で前歯の差し歯が取れた時、緊急に行う対処法とその後の治療法についてお伝えします。ぜひ、参考にしてください。
1.外出先で前歯の差し歯が取れた時、緊急に行う対処法
1−1.地域にある休日夜間診療所に連絡する
多くの地域には休日夜間診療所や歯科医師会で休日当番を設置しています。日本国内であればインターネットで検索すれば探せます。横浜市の場合は年中無休で横浜市歯科保健医療センターにて夜間救急歯科診療を行っています。
保険証は常に携帯しておいたほうがいいです。救急の場合も保険証がなければ自費診療となります。
1−2.歯磨きをした後そっと戻してみる
歯磨きをして、食べカスなどが残っていないか確認した後、取れた差し歯をそっと戻します。前歯の差し歯を戻してピッタリ合うようであればそのまま使います。ただし、少しずれて噛んでしまうと歯が割れてしまう可能性があります。
特に土台ごと差し歯が取れてしまった場合に、ずれて戻してしまうと歯が割れる確率が高くなります。歯が割れてしまうと、抜歯しなくてはいけない可能性が高くなります。また、寝ている間に差し歯が取れて気管に入ってしまうと、窒息の可能性もあります。緊急事態以外は歯医者で治療を行うようにしてください。
1−3.ポリグリップで付けてみる
ポリグリップは入れ歯安定剤で、ベトベトした粘着性のある材料です。口の中で使う材料なので体に悪い影響はありません。取れてしまった差し歯をキレイにして、乾燥させます。口の中の歯も歯ブラシでキレイにします。差し歯にほんの少し、ポリグリップをつけて、歯に付けます。付けすぎると中に溜まり、差し歯がしっかり付かなかったり、歯が割れてしまうことがあります。ゆっくりと噛んでみて差し歯が浮いていないか確認します。高いようであれば、一度外し、ポリグリップを取り除いて再度付け直します。
ポリグリップを差し歯が取れた時に使用することは本来の使い方ではありません。歯科医としてはお勧めできるものではありませんが、緊急事態の時のみ自己責任でお使いください。
2.絶対してはいけないこと
2−1.アロンアルファでつけてはいけない
一般のアロンアルファは体には使用できない成分が含まれています。もしズレてつけてしまった場合、噛み合わせること自体できなくなってしまいます。寝ている間など無意識に噛んでしまい、歯の根が割れてしまう場合もあります。歯が割れた隙間から細菌が入り、歯茎が腫れてしまうこともあるのです。
2−2.戻した歯で噛んではいけない
戻した歯で絶対に噛まないようにしてください。歯が割れる、間違って飲み込むなど多くのリスクがあります。できるだけ早期に歯医者で診てもらうようにしてください。
3.差し歯の取れ方による対処法
3−1.被せ物だけが取れた場合
差し歯は残っている根に土台をつけ、その上に被せ物があります。被せ物だけが取れてしまった場合は歯の根が割れる可能性は少ないです。そのため被せ物を戻しても、ポリグリップでつけても大きな影響が出ないことが多いです。しかし、もともと根が割れていたり、土台が取れていないけれど緩んでいる場合もあります。
3−2.土台ごと取れた場合
土台ごと取れてしまった場合は残っている歯の根の部分が欠けてしまったり、歯の根が割れてしまったりしている場合が多いです。緊急の場合以外は早期に歯医者で処置してもらったほうがいいです。自分で差し歯を戻して、亀裂が広がってしまえば抜歯しなくてはいけない場合もあります。
前歯のインプラントの治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
4.差し歯が取れてしまう原因
4−1.金属の劣化
金属を使う治療をしている場合、金属が錆びたり、劣化したりして歯の根と隙間ができて取れてしまうことがあります。特に保険の金属の場合、4、5年程度で劣化が起こることが多いようです。詳しくは「セラミックの歯/彼らが銀歯にしない6つの理由」を参考にしてください。
4−2.歯の根にヒビや割れ
差し歯は神経のなくなってしまった歯に治療する方法です。神経のない歯はもろく割れやすいのです。そこに硬い金属の土台を入れてしまうと、より割れやすくなってしまい差し歯が取れてしまいます。詳しくは「歯が割れた!歯根破折の原因と治療法」を参考にしてください。
4−3.歯ぎしり
歯ぎしりが強い方は歯や土台に通常以上の力が長時間かかるため、歯の根が割れたり、差し歯をつけた接着剤が剥がれたりして、差し歯が取れてしまうことがあります。歯ぎしりが強い方は歯を守るためにもマウスピースの使用をお勧めします。詳しくは「歯ぎしりによって起こる怖い出来事/マウスピースがあなたの歯を守ってくれる」を参考にしてください。
4−4.虫歯
差し歯と歯の隙間からの虫歯が進行すると取れてしまいます。虫歯の進行が大きいと歯を残すことができない場合もあります。神経のない歯は痛みが出ないために、虫歯に気づかず進行してしまいます。定期的な歯医者でのクリーニングでチェックしてもらう必要があります。
5.差し歯が取れないようにするための治療法
5−1.グラスファイバーの土台
グラスファイバーの土台は歯を割れないように補強します。歯と同じような硬さのため、根に余分な力がかからず、歯と一体化します。金属の土台のように歯より硬すぎると歯が割れる可能性が高くなります。
5−2.オールセラミックの冠
オールセラミックの冠は金属を使わないため、材料自体が劣化しにくくなっています。また、接着剤とのなじみがいいので、隙間からの虫歯になりにくい材料です。その為、歯、土台、オールセラミックと一体となり、差し歯が取れにくくなります。詳しくは「前歯をオールセラミッククラウンにしたほうがいい7つの理由/費用と期間」を参考にしてください。
根管治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
6.取れた差し歯や自分でつけた差し歯を放置すると
取れた差し歯や自分でつけた差し歯を放置すると虫歯が急速に進行します。歯の表面はエナメル質という硬い組織で守られています。虫歯になってしまうと差し歯などでエナメル質の代わりをして歯を口の中の細菌や酸から守っています。差し歯などに隙間のある状態だと、細菌が侵入し、歯の弱い部分を溶かす為に一気に虫歯が進行します。
7.奥歯の差し歯が取れた場合
奥歯の差し歯が取れた場合は戻さずそのままケースに入れて、歯医者に持っていくようにしてください。奥歯は噛む力が強くかかる為にズレて付けたり、浮いた状態で噛んでしまうと歯がすぐに割れてしまいます。詳しくは「歯の詰め物が取れた時、歯医者に行くまでにやってはいけない3つの事」を参考にしてください。
まとめ
旅行先で差し歯が取れる何てことはできるだけ避けたいですよね。今回は歯医者としては自分で付けてほしくはありませんが、緊急の場合の応急処置です。できるだけ休日診療所等で応急処置をしてもらってください。