虫歯治療で銀歯になるのは嫌だけど、セラミックは高いので、保険内でどうにか白く治したいと考える方は多いのではないでしょうか。コンポジットレジンはプラスチックでできていて、保険で白く治せる治療法なのです。実は、小さい虫歯であれば銀歯よりもコンポジットレジンのほうが歯を削る量が少ないために体にとっては優しい治療なのです。近年コンポジットレジンは研究開発が進み、以前よりも強度や審美性が改善され、よりいろいろな治療ができるようになりました。今回はコンポジットレジンでできる治療法を詳しくお伝えします。是非、参考にしてください。
1.コンポジットレジンとは
コンポジットレジンとは歯の色に近い樹脂製の素材で、プラスチックを歯科用に開発したものです。ペースト状のものが特殊な光をあてることによって短時間に硬まるという特徴を持ちます。歯と接着するため、歯とコンポジットレジンの間から虫歯になりにくいのです。また、小さな虫歯であれば保険で、白く、短時間でできるという利点があります。
2.コンポジットレジンで出来ること
2-1.虫歯を小さく削って目立たずに治療が出来る
コンポジットレジンを使えば、虫歯になってしまった部分だけを削って詰めることが出来ます。小さな虫歯の穴も直接お口の中で詰められるため、健康な歯はほとんど削らずに治せます。削る穴を最小限にすることができるので、治療中の痛みも少なくなりますし、コンポジットレジンは歯の色に近い材料のため、治療後の詰め物の痕が目立つこともありません。
2-2.欠けてしまった歯も一日で元通りに出来る
何かの拍子で欠けてしまった歯の部分がそれ程大きく無いようであれば、コンポジットレジンを使ってその部分だけを詰めることができます。一日で目立たずに歯を元にもどす事ができます。コンポジットレジンのペーストは光を当てると噛んでも問題の無い硬さまで一気に硬まるので、治療後30分程すればお食事しても大丈夫です。
2-3.金属アレルギーの予防が出来る
コンポジットレジンは唾液や酸で溶けにくく、アレルギーを起こしにくい材料です。金属アレルギーをお持ちの方では、口の中の金属の詰め物を除去してコンポジットレジンに置き換える処置を行い、アレルギーを予防することもあります。
2-4.前歯の隙間(すきっ歯)を埋めることが出来る
歯を削らずにお口の中で直接コンポジットレジンを詰める方法を「ダイレクトボンディング法」と呼んでいます。すきっ歯のすき間をコンポジットレジンで、歯の形に合わせて埋めていけば、歯を削ることなく見た目を美しくすることが出来ます。詳しくは「すきっ歯で悩んでいる人の70%が選ぶ驚きの最新治療」を参考にしてください。
2-5.両隣りの歯を削らずにブリッジが出来る
ブリッジとは、両隣りの歯を削って土台を作り、橋渡しをするように人工の歯を入れて歯が抜けてしまった部分を回復する治療です。ダイレクトボンディング法を使えば両隣りの歯を削らずにお口の中で直接コンポジットレジンを盛り足していき抜けてしまった歯の部分を作製することができます。
2-6.変色した歯を削らずに美しく出来る
歯を美しくしたいけれど、健康な歯をできるだけ削りたくないという方は多いかもしれません。ダイレクトべニアとは変色した歯の表面にコンポジットレジンを盛りつけ、1回の治療で削らずに見た目を美しくする方法です。近年のコンポジットレジンは、色のバリエーションが豊富で、数種類の色を組みあわせることにより天然の歯に近い白さを作りだすことができます。
3.コンポジットレジンの治療方法
- 虫歯を除去した後、歯の表面に接着材を塗ります
- コンポジットレジンを詰め、元の歯の形にしていきます
- 特殊な光を当て、ペースト状だったコンポジットレジンを硬くします
- 最後に噛み合わせを調整し、完了です
4.コンポジットレジンの治療費
コンポジットレジンで出来ることの幅は広がりつつあります。そのため、一部の治療は保険外になることもありますが、多くは保険適応のため比較的安価で可能です。材料的には保険と保険外で治療法に大きな違いはありませんが、保険外の場合にはより色を合わせて治療を行うことができます。最近、保険診療で使用されるコンポジットレジンに比較し、より天然の歯に近い色調を再現できるよう開発された保険外専用のコンポジットレジンも開発されています。
治療費の目安
コンポジットレジンを詰める治療(虫歯治療・歯の破折など)
保険(3割負担)1,500円程度
自費 5,000円~10,000円
すきっ歯を埋めるダイレクトボンディング治療
保険(3割負担)3,000円程度
自費 30,000円~50,000円
両隣りの歯を削らないダイレクトブリッジ
自費のみ 50,000円~100,000円
削らず歯を白くするダイレクトべニア
自費のみ 30,000円~50,000円
*治療1本につきの目安です
*この他に初診料、再診料、検査費などが別途かかる事があります
*自費診療の場合、歯科医院により費用に幅があります
5.コンポジットレジン治療で気をつけなくてはならないこと
5-1.定期的なメンテナンスが必要です
コンポジットレジンは水を吸う性質があるため、治療直後に比較し表面が着色したり、毎日の食事によってそれ自体が変色したりします。表面だけの着色であれば、定期的に磨いてあげると治療直後の白さと輝きを取り戻せることができます。コンポジットレジン自体が変色した場合は、詰め替える治療が必要です。ただ、詰め替えも古いコンポジットレジンの部分だけを削って、新しいものに詰め替えられるため、治療に際して痛みも出にくく、比較的簡単に処置できます。
5-2.硬くなるまでは水分が苦手
コンポジットレジンはペースト状から光を当てて硬くします。ペースト状のときに唾液や血液などが着いてしまうとコンポジットレジンが変色しやすくなったり、強度が弱くなったりしてしまいます。治療中は唾液が付かないようにゴムのマスク(ラバーダム)や唾液を吸うストロー(ZOO)を使いながら、丁寧に詰めていく必要があります。
5-3.奥歯では強度が不足する時がある
樹脂性の素材のため金属やセラミックと比較し強度が不足しています。大きく欠けてしまった歯や噛む力が強くかかる歯などの治療では、すり減りが早かったり割れたりしてしまいます。特に、奥歯の大きな詰め物や、被せもの、奥歯のブリッジなどはコンポジットレジンで治療をすることは出来ません。そのため、コンポジットレジン治療が最適かどうかの判断は、口の中の状態を確認する必要があります。担当の歯科医と相談してみてください。
6.コンポジットレジンで治療ができない場合
6-1.虫歯が大きな歯では割れてしまう
コンポジットレジンで詰める治療ではすり減りが早かったり割れやすくなります。そのような場合、強度の強い金属やセラミックなどで被せる治療が必要になります。詳しくは「セラミックの歯/彼らが銀歯にしない6つの理由」を参考にしてください。
6-2.大きく前歯が欠けた歯は詰めても取れてしまう
前歯が1/3以上大きく欠けてしまった歯をコンポジットレジンで治療した場合、詰めた部分が変色したり、取れやすかったりします。この場合、セラミック治療で歯を被せる処置を行った方が、色も変わることがなくきれいな状態が続きます。
6-3.歯ぎしりが強い方は欠けてしまう
歯ぎしりの習慣をお持ちの方で奥歯が大きく欠けてしまった場合も、コンポジットレジンではすり減りやすく再治療を繰り返すケースが多くなります。その場合、強度の強い金属やセラミックなどで被せる治療を行います。詳しくは「歯ぎしりによって起こる怖い出来事/マウスピースがあなたの歯を守ってくれる」を参考にしてください。
6-4.ブリッジは負担のかからないものしかできない
前歯1本の歯がない場合であればダイレクトボンドブリッジが出来る場合があります。負担が多くかかる奥歯や無い歯の幅が広い場合には強度不足により破折しやすくなります。噛む力が強くかかる部分のブリッジかどうかの診断は、お口の中の状態を慎重にチェックすることが必要です。噛む力が強くかかる場所には金属やセラミックブリッジでの治療がお勧めです。詳しくは「歯のブリッジ治療をしたい人へのアドバイス」を参考にしてください。
6-5.変色してしまった歯はホワイトニングが必要
歯の表面にコンポジットレジンを張り付けていくダイレクトべニアでは、コンポジットレジンが透明感の強い材料のため、もともとの歯の色を反映しやすくなります。神経が死んで黒く変色している歯は、ホワイトニングで元の白い状態に戻してからコンポジットレジンで詰めます。また、神経が死ぬと歯がもろくなりやすいため、被せる処置が必要だと診断した場合はセラミックで治療します。詳しくは「オールセラミック/美と健康のために」を参考にしてください。
6-6.一本だけでなく数本の前歯をまとめて美しくしたい場合
1本だけでなく、数本の前歯をまとめて美しくしたい場合、お口の中で直接詰めるコンポジットレジンでは、長時間の処置が必要になり、かえって患者さんの負担が大きくなってしまうことがあります。歯の見た目を美しくする他の方法としてセラミック治療・ホワイトニング・矯正治療などがあり、状態に合わせて適切な方法を選択して治療する必要があります。詳しくは「キレイに治す前歯の虫歯治療/笑顔をとりもどす治療」を参考になさってください
6-7.奥歯の銀歯を白く被せ治したい場合
小さな銀歯の詰め物をとってコンポジットレジンに置き換えることは可能ですが、一度大きく削る治療がしてある歯の被せ物を除去して詰めることは難しい場合があります。銀歯の被せ物を白く治療したい場合はコンポジットレジンよりも強度の高いセラミックで被せ物をすることをお勧めします。
7.コンポジットレジンのメリット・デメリット
コンポジットレジンのメリット
・歯に接着する素材
・歯を削る量が少ない
・治療期間が短い(多くの場合1~2日)
・歯の色に近く見た目が良い
・再治療が比較的容易
・保険適応の場合は安価
コンポジットレジンのデメリット
・時間が経つと変色する
・強度が必要とされる部位には使用できないことがある
まとめ
コンポジットレジンが進歩する以前は、虫歯になった歯はその虫歯の大きさに関わらず、歯を大きく削って型をとり、作製した銀歯やその他の材料で詰めたり被せたりするしか方法がありませんでした。歯に接着するコンポジットレジンは、年月と共にすり減ったり欠けたりしても、完全にとれてしまうケースは少なく、治療後の虫歯の再発が起こりにくいとも言われています。今後、コンポジットレジン材料の改良がさらに進むと治療できる範囲も広がっていくはずです。