歯医者がアドバイスする 「お腹の赤ちゃんのために妊婦のママが今できること」

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

妊娠するとお口の中の環境が大きく変化し、以前より虫歯になりやすかったり、歯茎がはれやすくなったりします。妊娠中に虫歯や歯周病になってしまうと、それがお腹の赤ちゃんに影響しないかが心配になるママもいらっしゃるかもしれません。妊婦のママがご自身のお口のトラブルを出産前に解決しておくことは実は生まれてくる赤ちゃんにとっても大切です。今回はお腹の赤ちゃんが生まれてくる前に妊娠中のママが出来ることを歯科の立場からアドバイスしていきたいと思います。

1.妊娠して変わるお口の環境

1-1.虫歯が出来やすくなります

妊娠すると唾液の量が減りお口の中が酸性に傾くため、虫歯が出来やすい環境になります。

虫歯の進行につながる生活習慣の変化

  • つわりで上手に歯が磨けない時期が続く
  • 食生活が変化して歯に良くない物ばかりに好みが偏る
  • だらだらと長時間食べ続ける習慣が出来る(食べづわり)

1-2.歯茎が腫れたり出血しやすくなります

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この症状は妊婦さんの約半数以上にみられ、妊娠中期頃に一番多いようです。つわりによる歯磨き不足も原因の一つですが、妊娠すると女性ホルモンが増えるため、歯周病の原因菌が増加して歯茎の炎症が起こりやすくなります。歯周病は20代より30代後半を過ぎると、急に重症化する病気です。近年、出産される妊婦さんの多くはちょうどこの年代ですから特に注意が必要です。

2.お腹の赤ちゃんに影響する妊婦のママのお口の状態

2-1.妊娠中のママからの栄養でお腹の中にいる赤ちゃんの歯は作られます

赤ちゃんの歯がいつ作られるかご存知でしょうか。実は、妊娠中、ママのお腹の中にいるときに赤ちゃんの乳歯や永久歯は既に作りはじめられています。そのため、お腹の赤ちゃんの丈夫な歯を作るためには妊娠中のママがバランスのいい食事をとることが大切です。

乳歯と永久歯が出来る時期

「歯」は、歯のもとになる芽(歯胚・しはい)が顎の中にでき、そこにカルシウムやリンがくっついて硬くなり(石灰化・せっかいか)、生える準備をはじめます。乳歯の歯胚は、妊娠7週目からでき始め、妊娠4カ月頃から石灰化が始まります。生まれる時にはもう生える準備ができています。永久歯の歯胚も妊娠4~5カ月頃からでき始め、生まれる頃には石灰化がスタートします。

2-2.妊娠中からの虫歯予防は赤ちゃんの虫歯予防にとても重要

虫歯は細菌が感染して起こる病気ですが、生まれたばかりの赤ちゃんのお口には虫歯菌はほとんどいません。ではどこから虫歯菌はやってくるのでしょうか?それは多くの場合、育児をするママのお口の中にいる虫歯菌が、赤ちゃんと同じ食器やコップ、お箸を使うことで感染してしまいます。

虫歯菌に最も感染しやすい時期

虫歯菌は歯が無いと定着しないため、ある程度歯がそろう1歳7ヶ月~2歳7ヶ月までが最も感染しやすい時期といわれています。この時期を感染しないで乗り切ればその後は虫歯になる率がとても下がるといわれていますが、赤ちゃんにとってこの時期のママとのスキンシップは大変重要です。赤ちゃんに気兼ねなく触れて育児を楽しむためにも、ママが早めに虫歯治療をしておきましょう。詳しくは「虫歯菌はだ液から感染する?知っていないと怖い虫歯菌の常識」を参考にしてください。

2-3.妊娠中のママが歯周病だとお腹の赤ちゃんに感染します

歯周病も虫歯と同じで感染症の一種です。赤ちゃんのいる子宮には、妊娠中のママからたくさんの血液が入りこんでいます。そのため妊娠中のママに感染があると胎盤を通しておなかの赤ちゃんに感染することがあります。詳しくは「30代以上の方必見!歯周病に負けない5つの知識と3つの治療法」を参考にしてください。

2-4.重い歯周病は早産の原因になります

重い歯周病になると、歯茎で起こった炎症性の物質が血液を通して徐々に全身に広がります。そうすると子宮を収縮する物質の分泌がうながされ、本来の出産予定日よりも前に子宮収縮を引き起こしてしまい早産になると言われています。歯周病のママが早産になるリスクは歯周病でない人の7.5倍とも言われており、この数字は早産の他の原因であるタバコやアルコール、高齢出産などに比較して、はるかに高い数字です。

3.お腹の赤ちゃんのために妊婦のママが今できること

3-1.お腹の赤ちゃんの歯のためにバランスの良い食生活をしましょう

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妊娠中のママからの栄養でお腹の中にいる赤ちゃんの歯は作られます。お腹の赤ちゃんに丈夫な歯をつくってあげるために、カルシウムやリン、タンパク質、ビタミンA・C・Dなどの栄養素を含む食品をママがバランス良くとるようにしましょう。

歯に必要な栄養素

歯の基礎をつくる

だんぱく質

歯の石灰化を助ける

カルシウム リン

歯の表面のエナメル質をつくる

ビタミンA

歯の象牙質を作る

ビタミンC

カルシウムの代謝や石灰化に影響

ビタミンD

 

3-2.歯科検診で今のお口の状態を知る事から始めましょう

妊娠すると身体の変化とともにお口の中も変化します。普段から歯科の定期検診を受けていた方も、妊娠したら改めて検診を受けご自身の今のお口の状態を知るようにしましょう。最近では、産前・産後の「妊産婦歯科検診」を無料で実施している市や区も多くなりました。皆さんのお住まいの地域でも行っているかもしれませんので、是非一度、確認してみましょう。詳しくは「妊婦に歯科検診をお勧めする4つの理由」を参考にしてください。

3-3.出産前にかかりつけの病院を見つけておくことは大切です

出産してからの病院探しは意外と大変なもの。妊娠中に全ての歯科治療が終了するとは限りません。出産後に赤ちゃんをベビーカーに乗せて通院できる病院なのか、赤ちゃんの歯科検診も含め家族皆が末永くかかれる病院なのかなど、妊娠中にかかりつけの病院を見つけることは大切です。そのためにも、検診を兼ねて一度歯科の受診をしておくことをおすすめします。

3-4.毎日の歯磨きを見直しておきましょう

虫歯予防にも歯周病予防にも効果があるのは、なんといっても歯磨きです。歯磨きは、細菌を取り除くだけでなく、歯茎の血流を良くするマッサージ効果もありますし、軽度の出血や歯茎の腫れといった程度の症状なら、きちんと歯磨きをしていけば治ります。詳しくは「虫歯や歯周病を徹底的に防ぐ「歯磨き力」をつける6の秘訣」をご参考になさってください。

つわりの時は無理せず出来るケアをしましょう

つわりのときは無理をしないこと。歯磨きは食べカスや歯垢を落とすブラッシングが重要なのでハミガキ粉の味がダメな方は使わなくて大丈夫です。子供用の歯ブラシなどの小さめのものを使い、前かがみになって掻きだすように磨くと少しは楽に歯磨きが出来るかもしれません。歯磨きもできないようなら食後にうがいをしましょう。つわりが治まってから、歯ブラシでは取れない硬くなった汚れは歯科でクリーニングすれば問題ありません。

3-5.虫歯は出産前になるべくなら治しましょう

出産前に虫歯治療をしておくと、生まれてくる赤ちゃんのお口に虫歯菌を感染させるリスクを減らすことができ、ママと生まれてくる赤ちゃん両方の歯を守ることができます。また、虫歯治療を早めに終わらせておけば、ママが虫歯で痛い思いをする姿をお子さんに見せなくてすむため、歯医者さん嫌いにならなくてすむかもしれません。詳しくは「知ってるだけで格段に虫歯が減る!虫歯の全情報と全知識まとめ」を参考にしてください。

コンポジットレジン治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

3-6.歯医者でクリーニングをしてもらいましょう

どんなにキレイに歯磨きをしているつもりでも、完璧には磨けていないことがほとんどです。最初は歯ブラシで取れるような軟らかい汚れも、だんだんと硬くなり自分では落とせなくなります。この硬くなった汚れである歯石をそのままにしておくと歯周病の進行につながりますので、是非出産前に一度はクリーニングしてもらいましょう。詳しくは「歯医者で行うクリーニングの6つの疑問とセルフクリーニングの4つの手順」をご参考にしてください。

3-7.お子さんに与える「おやつ」について考えておきましょう

お腹の中の赤ちゃんもいずれ成長すればご家庭にあるお菓子やジュースをママやパパと同じように口にしていくことになります。赤ちゃんの虫歯予防のためにはおやつの与え方について今のうちにご家庭で話あっておくと良いかもしれません。

虫歯を防ぐおやつの与え方

甘い物を与えすぎると肝心な3度の食事のとき、食欲を減退させてしまいます。味覚が発達する3歳くらいまでは、お菓子やチョコレートはあまり食べさせないほうがよいかもしれません。味を知らなければ食べたがることもありません。ポイントは『おやつのあげ方』です。

  • たくさん与えすぎない
  • 時間をきめて与える(ダラダラ食いの予防)
  • 栄養のバランスを考える
  • 甘いお菓子類ばかりにしない
  • スポーツ飲料やジュースを与えすぎない
  • 噛みごたえのあるものを与える

4.妊娠中の歯科治療について

妊娠中の歯科治療は安定期がおすすめです。 妊娠中期(5ヶ月~8ヶ月)であればほとんどの方が問題なくできます。その他の時期でも、お母さんの体の状態や治療内容によっては可能ですので、歯科医とご相談ください。

4-1.レントゲン撮影について

小さいフィルムのデンタル写真が基本ですが、必要に応じてあご全体がうつるパノラマ写真を撮る場合もあります。どちらも歯科医院で使用しているレントゲンは歯の部分のみを映すものです。撮影する時は鉛でできたエプロンを着用するので赤ちゃんが被爆する心配はありません。ご安心下さい。

4-2.歯科麻酔について

歯科で使用している麻酔は歯茎に打つ局所麻酔なのでお腹の赤ちゃんへの影響は心配しなくても大丈夫です。無痛分娩にも使用される麻酔と同じものになります。

4-3.治療中の体勢について

お腹の張り具合、個人差にもよりますが治療椅子をあまり倒しすぎないで楽な体位を取ってもらえるよう配慮して治療します。妊娠中は急な体位の変換で立ちくらみを起こしたりトイレが近くなったり、つわりで嘔吐反射が強くなったりします。治療椅子から立ち上がるときはゆっくり立ちましょう。治療中でもつわりがひどい時やトイレに行きたい場合は遠慮せずに歯科医に伝えましょう。

4-4.お薬について

原則として妊娠中の方にお薬は出しませんが、痛みがひどい場合は我慢することが逆にお腹の赤ちゃんに悪い影響を与えることがあるため、産婦人科の先生と相談した上でお出しすることもあります。基本的に胎盤を通過するお薬は避けるようにし、お腹の赤ちゃんに影響の無いものを選びます。これらはかかりつけの先生とよく相談した上で用法・容量を必ず守って服用して下さい。

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おかざき歯科クリニックの基本情報

ホームページ http://www.okazaki-dental.com
電話番号 045-828-6480
住所 神奈川県横浜市戸塚区品濃町1835ー29コーポレート東戸塚
診療時間 月・火・水・金 9:30~13:00 14:30~19:00
                     土          9:00~13:00 14:00~18:00 
     木・日・祝日:休診日

院長経歴

岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任

まとめ

今回ご紹介したように、お腹の赤ちゃんのために妊婦のママが今できることは色々あります。ママから赤ちゃんに伝播すると言われている虫歯を早く治療しておくこと。歯周病を予防してあげることも早産のリスクを下げることにつながります。

出産するとしばらくは赤ちゃん中心の生活になり、なかなか自分の健康にまでは気を回せなくなるものです。お腹の赤ちゃんのためだけでなく、お口のトラブルを子育て中に抱えることのないよう、ご自身のために一度、出産前に歯医者でチェックしてもらいましょう。正しい歯磨きの方法を歯医者で習得しておくと、赤ちゃんの仕上げ磨きに生かせるかもしれません。

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おかざき歯科クリニックでは、まず自分の歯の状態を知っていただいた上で、最新の治療法や保険の適用まで詳しく説明します。一人一人に合った専門性の高い治療を提供しています。
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歯茎下がりは歯周病の始まり

歯周病治療

歯茎が下がると歯がしみやすくなります。あなたは大丈夫でしょうか?


これが歯周病の始まりなのです。


歯周病は虫歯と違って、重度になるまで痛みなどの自覚症状がないため、気付いたら歯が抜ける寸前だったということも少なくありません。歯を支える骨が溶けて、最悪歯を残すことが難しくなるケースもあります。


これから20年、30年、生涯にわたって自分の歯で過ごすためには、今が大切です。 ひどくなってしまう前に、いちど検診を受けることをおすすめします。



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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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