30代以上の方必見!歯周病に負けない5つの知識と3つの治療法

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

自分で歯周病を自覚している人は少ないのではないでしょうか。歯周病は歯の周りの骨が溶ける病気で、歯を失うもっとも多い原因です。恐ろしいですよね。しかし、歯周病は適切な治療を行えば進行を抑えることが出来る病気でもあります。初期のうちに治療やメンテナンスを受けていれば、年をとっても自分の歯でおいしく食事ができる可能性が高まります。今回は歯周病の治療と最新の治療法をお伝えします。ぜひ参考にしてください。

1.歯周病に負けない5つの知識

1-1.進行すると歯が抜けてしまう病気です

日本人の成人の80%がかっている病気で歯を失う一番多い原因が歯周病によるものです。歯周病とはプラーク(細菌の塊)によって歯の周りの骨が溶け、歯が揺れたり、歯茎が腫れたりして、最終的には歯が抜けてしまう病気です。初めの段階では症状が無い為に’気づかないうちに進行してしまいます。

1-2.抵抗力が下がる分メンテナンスで助けてあげる必要がある

若い時は免疫力が高いためにプラークが歯茎に侵入してきても、歯茎が腫れる程度(歯肉炎)です。年齢とともに免疫力が衰えるとプラークの侵入で骨まで溶かしてしまいます。これが歯周病です。免疫力が下がった分デンタルフロスやメンテナンスで体の抵抗力を助けてあげる必要があります。

1-3.知識がないと歯周病菌に負けてしまう

歯周病によって溶かされた骨は回復させるのに外科的な処置が必要となります。また、回復させることができない場合もあります。20代後半から始まる歯周病に対してどうすれば歯周病にならないか、進行を止めることができるのかの知識があり、実行できれば歯周病に悩まされなくて済みます。

1-4.プラークを落とすテクニックが必要

歯周病はプラークとの戦いであり、毎日、毎食後細菌と戦っています。誰かが毎食後歯を磨いてくれることはなく、自分で磨かなければ誰も助けてはくれないのです。一時的には歯医者で磨いてもらったり、歯石を取ったりして、よくはなりますがすぐに元に戻ってしまいます。歯がある限りこの戦いは続き、負けると総入れ歯になり終わります。

1-5.歯周病治療の3本柱

歯周基本治療

歯周病の原因であるプラークを取ることをメインにしている治療です。自分でプラークを取る力や歯石を取ってプラークを取りやすい環境にすることを目指しています。基本治療ができていなければ外科治療をしても、元に戻ってしまいます。初期から中等度に進行している方で歯周ポケットは4mmまでです。治療回数は2~8回、重症度によって変わります。

歯周外科

基本治療で取りきれない歯石や歯周病で溶けて凸凹になった骨の形を整えプラークコントロールがしやすい形にします。また、状態の悪い歯を抜歯し、他の歯に悪い影響を及ぼさないようにします。重度に進行している方で歯周ポケットは5mm以上です。初期治療終了後、必要な方のみ行います。

メンテナンス

歯周病は治療をしたからと言って元に戻る病気ではありません。治療後進行させないように維持していかなければいけません。メンテナンスは改善したお口の中の状態を、悪化させないように維持していく治療です。全ての人に必要です。

2.歯周病で重要な基本治療

2-1.歯周病治療の90%はプラークコントロール

プラークコントロールとは歯ブラシやデンタルフロスなどを使ってプラーク(歯垢)を付けないようにコントロールすることです。プラークコントロールを完璧に行うことができれば治療の90%は終了です。なぜなら歯周病の原因であるプラークは毎日お口の中に発生し、それを毎日取り続けなくては歯周病は改善しないのです。いくら高価な治療や痛い治療をしても毎日のプラークコントロールができなければ全て無になってしまいます。

歯磨きの仕方「虫歯や歯周病を徹底的に防ぐ「歯磨き力」をつけるためには!!」を参考にしてください。

デンタルフロスの使い方「デンタルフロスで虫歯や歯周病を防ぐ方法」を参考にしてください。

プラークコントロールの効果

プラークコントロールを実践するとまず歯茎からの出血が驚くほど減ります。また歯茎の腫れや口臭も激減します。なぜならお口の中の細菌の80%は歯の周りに付いているプラークの中にいるからです。歯茎が引き締まると歯周ポケットが減り、プラークが隠れる場所もなくなるため、ますますお口の中が改善していきます。詳しくは「危険信号!歯茎からの出血を止める自宅でできる4つの手順と正しい治療法」を参考にしてください。

2-2.スケーリングをして歯石ごと細菌を退治

スケーリングとは歯の周りについた歯石を取り除くことです。歯石はプラークと唾液によって作られ、ザラザラとし軽石のように小さな穴が空ていて、細菌が繁殖しています。歯石の中の細菌は歯磨きなどでは取れないので、歯石ごと細菌を取る必要があります。歯石は主に超音波の振動を与えて砕いて取ります。詳しくは「絶対歯石を取ったほうがいい本当の理由」を参考にしてください。

スケーリングの効果

スケーリングをすると歯石によってザラザラしていた歯の表面がツルツルとなり、プラークが付きにくかったり、落とし易い環境になります。

2-3.歯茎の中の歯石を取るディープスケーリング

ディープスケーリングとは歯茎の中にできた歯石を取ることです。この歯石は血液を含み歯茎の中で黒く硬く歯にこびり付いています。超音波の振動や歯石を取る細い器具を使って取って行きます。この時、歯茎が腫れていたり、出血があると取り残しが増えるため、出血が無い歯茎の状態にしてから、歯石を取る必要があります。歯周病ポケットの深さは4mmまではこのディープスケーリングで対応します。詳しくは「歯周ポケットは口臭や歯周病の始まり/歯周ポケット改善方法」を参考にしてください。

ディープスケーリングの効果

図3

ディープスケーリングによって歯周ポケット内の歯石が除去され、根の表面がツルツルになり、ポケット内に溜まっていたプラークも取ることができます。これによって歯茎は一段と引き締まり細菌が歯周ポケット内に入りにくい環境を作ります。

3.重度の方には歯周外科治療

3-1.歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ・フラップ手術)

5mm以上の歯周ポケッがある場合には、奥まで歯石がついてしまい歯茎の入り口から歯石を取ることが不可能です。全ての歯石を取るために、麻酔をし歯茎に切開を入れて、歯茎を開いて歯石が見える状態にして取り除いていく方法が歯肉剥離掻爬術です。歯の根は複雑な形をしており歯石を取り残さないために行います。また、同時に歯茎の中の骨の形を整えることによって歯周ポケットを浅くする方法も行います。

フラップ手術の時間と金額

保険内で処置が可能で1回に4本程度まとめて行い、金額は3割負担の方で10,000円前後です。処置時間は1時間程度です。

3-2.歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は歯の周りの骨が極端に減っている場所にはフラップ手術と同時に、溶けてしまった骨を再生させることです。骨を再生させることによって深い歯周ポケットがなくなり、プラークが溜まりにくくします。再生療法は骨が減ってしまった部分に人工の骨やエムドゲイン(特殊なたんぱく質)を入れ、骨を再生させます。

再生療法の時間と金額

人工骨を使う場合は保険が適用されます。金額は3割負担の方で一か所につき15,000円前後です。処置時間は1時間程度です。エムドゲインは保険適用外で一回の処置につき150,000円から200,000円程度です。

歯周病で溶けた骨を再生させるエムドゲイン再生療法の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

4.歯周病の進行を止めるメンテナンス

メンテナンスとは歯周病の治療が終了した後に、健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。メンテナンスではご自身で行っているプラークコントロールへのアドバイスや落とし切れていない歯周ポケット内を機械的に洗浄します。メンテナンスを行わないとせっかく行った歯石除去や、痛い思いをして行った外科処置も、すぐに元に戻ってしまいます。毎日のプラークコントロールと、定期的なメンテナンスを行わなければ歯周病を改善することは出来ないのです。自分の状態にあったメンテナンスの間隔で行ってください。

4-1.メンテナンスの間隔

毎月行ったほうがいい方

重度の歯周病で5mm以上の歯周ポケットが残っている方
治療で歯周外科まで行った方
糖尿病や骨粗鬆症などお体の状態で歯周病に影響のある方
お薬の影響で歯茎の盛り上がりが強い方
ご自身でのプラークコントロールが苦手でお口の中に細菌が残りやすい方

3~4か月の間隔

歯周ポケットが3~4mmでご自身のプラークコントロールが上手な方
親知らずが残っていて部分的に歯周病のリスクが高い方

6か月の間隔

歯周ポケットが1~2mmでご自身のプラークコントロールが上手な方

5.歯周病治療に必要な検査

5-1.歯周ポケット検査で深さと出血を確認する

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歯周ポケットは自分で測ることはできません。歯医者で歯科衛生士にポケット探針(たんしん)という器具で測ってもらいます。主に歯周病検査の時に測ってもらうもので、ブラッシング方法を変えたり、歯石を取ることによって、どれくらい改善したかを評価したり、定期検診時に歯周ポケットが深くなっていないかを確認します。 また、歯周ポケット内からの出血があれば現在進行形であり、なければ歯周ポケットの進行がなく安定している状態と評価します。

5-2.動揺度検査で歯の揺れを確認する

歯の揺れの大きさを測ります。歯の周りの骨が溶けてくると、支えがなくなり歯は揺れてきます。歯周病の治療によって初期の揺れであれば止まってきますが、重度の歯周病の方は治療をしても止まらないことがありますので、必要であれば歯と歯をつなぐ処置をして、揺れを防ぎます。

5-3.レントゲン検査で歯茎の中の骨の高さを確認する

レントゲンは歯茎の中でどの程度骨が溶けているか確認します。歯周病は痛みが出ずに大きく進行してしまう病気です。

5-4.プラークがご自身でどれだけとれているか確認する

毎日の歯磨きができなければ歯石を取ってもすぐに付いてしまい、歯周病の進行を止めることは出来ません。プロに教わり効率のいいプラークコントロールを習得することです。

5-5.歯周病菌の種類や活動状態を確認する

プラークを顕微鏡で見るとある程度の種類や、活動状態が確認できます。歯周病菌の活動場所をなくし、必要であれば薬で殺す方法を使うこともあります。

6.最新治療法

最新治療は歯周基本治療を助けるための治療法です。

6-1.歯周内科:抗生物質で細菌を殺す

抗生物質を使って歯周病菌を殺す方法です。ジスロマックという強い抗生物質を使いバイオフィルム内の細菌まで死滅させます。抗生物質は2週間ほど効果がありますのでその間にポケット内の深い歯石を取り除いてしまいます。その後は細菌が繁殖しないようにぺリオバスターというスプレー剤を使いながら細菌数をコントロールしていきます。

注意:抗生物質は体にとっていい細菌まで殺してしまいます。また、一度細菌を殺してもすぐに戻ります。何度もできる治療ではないので一度行った後は戻らないようメンテナンスが重要になります。

6-2.3DS:薬剤を浸透させて細菌を殺す

3DS(Dental Drug Delivery System)とは専用のマウスピースを使って薬を、歯周ポケットの隅々まで浸透させる方法です。歯医者で型どりをしてマウスピースを作り、歯磨きの後、マウスピースに歯周病菌を殺菌するお薬を入れます。唾液に洗い流されないため、お薬の効果が長い時間続くことが期待できます。

6-3.善玉菌を住みつかせるプロバイオティクス

プロバイオティクス(善玉菌)がお口の中の悪玉菌である虫歯菌のすみかをうばっていく方法です。歯磨きをして歯周病菌が減った後に、ゆっくりタブレットを舐めるのが効果的です。使い続けなければ歯周病菌はもとに戻ってきます。歯科医院でも市販でもバイオガイヤプロデンティスという商品が購入可能です。

7.近年の歯周病の新しい考え方:バイオフィルム感染症

7-1.バイオフィルムとは

バイオフィルムとはキッチンやお風呂場に出るヌメリの正体です。液体の中に堅いものがあるとまずこのバイオフィルムが作られます。バイオフィルムの中に細菌が繁殖し、臭いなどの元になります。お口の中では唾液の液体の中に固い歯があり、そこにバイオフィルムは作られます。

7-2.歯周病菌がバイオフィルムに感染している

歯周病菌はバイオフィルムの中で繁殖し、そこから毒素が出されます。その毒素に対し体は抵抗力である免疫細胞を歯の周りの歯茎に送り込みます。しかし、バイオフィルムの壁は厚く、免疫細胞は歯周病菌に届かず、集まった免疫細胞は歯茎や骨に反応してしまい、歯茎が腫れたり、骨が溶けたりしてしまうのです。

7-3.歯周病の治療はバイオフィルムを取り続けること

歯周病の治療を簡単に言うとバイオフィルムを取り続けることです。バイオフィルムの中に多くの細菌が増殖する前に、歯ブラシやデンタルフロスでバイオフィルムを毎日取って歯周病を防いでいきます。また、バイオフィルムは機械的に擦らないとれないので、歯周ポケットが深い人は歯医者で定期的にクリーニングしてバイオフィルムを定期的に剥がして、骨が溶けるのを防ぎます。

まとめ

歯周病を理解していれば決して怖い病気ではありません。治療法は確立されている病気です。しかし毎日のプラークコントロールは自分で行う必要があります。自分の寿命より歯の寿命が長ければきっといい人生が送れるはずです。

歯茎下がりは歯周病の始まり

歯周病治療

歯茎が下がると歯がしみやすくなります。あなたは大丈夫でしょうか?


これが歯周病の始まりなのです。


歯周病は虫歯と違って、重度になるまで痛みなどの自覚症状がないため、気付いたら歯が抜ける寸前だったということも少なくありません。歯を支える骨が溶けて、最悪歯を残すことが難しくなるケースもあります。


これから20年、30年、生涯にわたって自分の歯で過ごすためには、今が大切です。 ひどくなってしまう前に、いちど検診を受けることをおすすめします。



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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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