インプラントの手術を受ける前に知っておきたい流れと種類

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

インプラント治療とは、失った歯の代わりにチタン製の人工歯根(インプラント)を顎の骨(歯槽骨・しそうこつ)に埋め込み、セラミックやジルコニアで作製した人工の歯を被せることによって、元あった自分の歯と同じ見た目や噛む力を回復することができる新しい治療法です。
1960年代からヨーロッパを中心に臨床応用が始まり、現在では、歯を失った時の最も有効な治療の一つとして認識されるようになりました。今回は、多くの患者さんが不安に感じているインプラント治療の「手術」についてお伝えします。

1.インプラント手術とは

基本的なインプラント手術は、歯を失った場所に部分麻酔を行い、歯茎を切って、開き、顎の骨(歯槽骨・しそうこつ)に穴をあけ、チタン製のインプラントを入れて歯肉を糸で縫います。
通常のインプラント手術は1本あたり10分~20分程度と比較的短時間で手術が終わるため、「歯を抜いた時より楽だった。」と言われる患者さんも少なくありません。しかし、インプラントを長く使うために、約6mmの骨の幅と約10mmの骨の高さが必要になります。その骨が足りない場合には、手術と同時あるいは手術の前に骨を作る手術(骨造成・こつぞうせい)が必要になります。

 

2.インプラント手術の流れ

3.インプラント手術の期間と種類

3−1.骨がしっかりしている人は1回法の手術

1回法の手術は、1回目の手術でインプラントを骨に埋め込む手術と同時に土台(アバットメント)を取り付ける方法です。その土台を一部出した状態でインプラントが骨と着くまでの2~6カ月間待ちます。1回法は2回法に比べて手術回数と来院回数が少なくなり、歯茎の治りが早いため、治療期間が短くできるというメリットがあります。

3−1−1.即時荷重によるインプラント手術

即時荷重(そくじかじゅう)とは、1回法手術でインプラントを入れる手術と土台(アバットメント)を付け、仮歯(かりば)を付けることにより、手術当日から噛めるようになる画期的なインプラント手術です。
インプラントを入れる部分の骨の状態やインプラントを入れる本数などの条件が合っていて、インプラントを入れた時にしっかりと安定していた場合、この手術が可能になります。即時荷重によるインプラント治療は、総入れ歯を使用されているご高齢の方や芸能人など人に接する機会の多い職業の方にとって、特にメリットの大きい手術法です。

 

全てのインプラント手術で行うコンピュータ・シミュレーションによるインプラント手術

従来のインプラント治療では、平面的なレントゲンによってインプラントを入れる位置を決めていましたが、現在はCT撮影した3次元的な顎の骨のデータを専用のシミュレーションソフトに入れることで、より精密に治療計画が行えるようになりました。
従来のレントゲンでは確認できなかった血管や神経の位置、骨の状態などが正確に確認できるため、インプラント手術をより安全に、また、正確に行うことが可能になりました。

全てのインプラント手術で行うコンピュータ・ガイデッド・サージェリー(ガイド手術)

コンピュータ・シミュレーションによって、最適なインプラントを入れる位置や使用するインプラントの種類を決め、その計画通りにインプラント手術を行うための手術補助用のマウスピース(ガイド)を製作します。ガイドを使用したインプラント手術は、より正確にインプラントを入れる方向や深さをコントロールできるため、今までの勘や経験による手術に比べて安全性が高くなります。

3−1−2.フラップレス手術(歯肉を切らない無切開手術法)

ガイド手術の応用で、歯茎を切ることなくインプラントを入れる手術を行うのが「フラップレス手術」です。フラップレス手術は、手術時間が短縮され、術中の出血や術後の痛み、腫れなどを大幅に減らすことが可能です。糖尿病などの全身的な疾患をお持ちの方やご高齢の患者さん、手術の恐怖心や不安が大きい方にとって、特にメリットの大きい最新のインプラント術式です。

3−2.骨が柔らかい人は2回法の手術

3−2−1.2回法手術

2回法手術は、1回目の手術でインプラントを埋め込み、歯茎を糸で縫って完全に閉鎖し、インプラントが骨と結合するまで2~6カ月間待ちます。そして、2回目の手術でインプラントに土台(アバットメント)を取り付けます。2回目の手術は5〜10分程度です。
2回法手術は、歯茎を完全に封鎖することによって細菌に感染しにくいというメリットがあります。インプラントを入れた部位の骨が柔らかい場合や同時に骨を再生させるための処置を行う場合などは、この手術を選択します。

3−2−2.ソケットリフト(上顎臼歯部の骨の高さが足りない場合の骨再生術)

ソケットリフトは上顎の奥歯の部位にインプラントを入れる時に、骨の高さが足りない場合に行う手術です。上顎の骨にインプラントを入れるための穴を空けて、その穴から専用の器具を使って上顎の骨の一部を鼻の空洞に押し上げて骨の高さを確保します。メリットはインプラントを入れる穴から行うために手術による身体的な負担が少なく、短時間(5分程度)の追加処置で、同時にインプラント埋入が可能です。デメリットはできる場所とできる骨の高さが決まっていることです。

3−3.骨が少ない方はインプラント手術前に骨を作る骨造成(こつぞうせい)手術

3−3−1.サイナスリフト(上顎の奥歯の骨の高さが足りない場合の骨造成手術)

サイナスリフトは、ソケットリフトができない場合やさらに骨の高さが足りない場合に、歯茎の外側から骨に穴を開けて、ご自身の骨や人工骨を入れ、インプラントを入れるため必要な骨の高さを確保する骨造成手術です。
場合によってはインプラントを同時に入れる場合もありますが、多くの場合は約6カ月間骨ができるのを待ってから、再手術でインプラントを入れます。サイナスリフトのメリットは、奥歯1~4本分の広い範囲に骨造成が可能で、高度に骨吸収した状態でも対応できることです。デメリットとしては手術による患者さんの身体的負担があり、移植した骨が感染するリスクを伴うことです。また、追加の治療費もかかります。

3−3−2.GBR(骨の高さや幅が足りない場合の骨再生術)

GBR(Guided bone regeneration)とは、骨が失われた部位にご自身の骨や人工骨を移植して、骨の高さや幅を確保するための骨造成手術です。GBRはインプラント手術に必要な骨の量が不足している場合はもちろん、歯茎下がりなどがあると目立ってしまう上顎の前歯などのインプラントにも多く用いられます。

3−3−3.ベニアグラフト(ブロック骨移植)

ベニアグラフトは、主に上顎の前歯などで広い範囲に骨が薄くなっている場合に用いる骨造成手術です。ご自身の口の中(上下の奥歯や下の前歯など)からブロック状の骨を取り出して、骨の薄い部位に移植(固定)します。その際に骨の隙間を埋めたり骨の形態を整えるためにGBRを一緒に行うことがあります。通常であれば、手術後約6カ月で移植した骨が再生し、インプラント治療が可能になります。骨を取る場所によっては神経の麻痺などのリスクもあるため、口腔外科の高度な知識と治療技術が求められる治療といえます。同様の治療で、ブロック骨移植によって広範囲に骨の高さを確保するための骨造成術をオンレーグラフトといいます。

3−4.総入れ歯の方のインプラント手術

オールオンフォー(歯をすべて失った方の即日インプラント治療)

歯をすべて失った方のインプラント治療は、従来の治療法では、インプラント本数が8~10本必要で、しっかり噛めるようになるまでに約3~6ヶ月かかり治療費も高額になることから、健康に不安を抱えるご高齢の方や経済的に余裕のない方には困難な治療でした。「オールオンフォー」による即日インプラント治療は、下顎は4本、上顎でも4~6本のインプラントですべての歯をしっかり支えることができて、噛む機能と審美性を即日に回復できるというまったく新しい考え方のインプラント術式で、従来の治療法に比べて治療コストを低減できるため、より多くの患者さんに適応することが可能になりました。

まとめ

インプラント治療が普及し始めてから約50年が経過した現在、使用する材料や手術補助システムも年々進化し、インプラント治療は、より安全で有効な治療法となりつつあります。インプラントの手術に対して恐怖心が強い方は、通常の部分麻酔に加えて痛みや不安を軽減できる静脈内鎮静麻酔なども有効です。また、糖尿病や骨粗しょう症などの全身的な疾患でインプラント手術が受けられないとされていた方でも、かかりつけ医師との連携による術前の投薬管理や術中の全身的管理、負担の少ない術式によってインプラント治療が可能になる場合もありますので、信頼のおける歯科医師にご相談されてみてはいかがでしょうか。

おかざき歯科クリニック院長略歴

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岡崎 弘典

マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関 https://www.dent-kng.or.jp/iryou/shougai/
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医 https://www.dent-kng.or.jp/iryou/sessyoku/
がん歯科医療連携登録医 https://ganjoho.jp/data/professional/med_info/dental/files/14_kanagawa.pdf
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任

おかざき歯科クリニックでは最新の医療機器を完備

マイクロスコープ

根管治療を手術用顕微鏡で行うためのマイクロスコープです。8倍から20倍の拡大率で行うことができ、超精密な根管治療を行うことができます。

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CT‐X装置

低被ばくで高解像度のX線CT装置で歯の根の形態を3次元的に確認します。

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DACプロフェッショナル

医科の基準に準じた高度な滅菌を提供しています。ドイツ製のDACプロフェッショナルは小型高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)のヨーロッパ基準EN13060のクラスB規格をクリアーする、高度なオートクレーブです。

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歯科の歯を削る機械を滅菌する完全オートメーション化された滅菌システムです。治療後は全ての器具をこのシステムで滅菌しています。

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セラミックを3Dプリンターのように削り出して作る装置です。詰めるセラミックなどの場合は1日で型取りからセットまで行うことができます。

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おかざき歯科クリニックのインプラントの特徴

インプラント

インプラント治療をしたいと思っているけど、どんな治療をされるのか、どのくらい費用がかかるのか不安に思っている方も多いと思います。


おかざき歯科クリニックでは、安全第一の治療はもちろんのこと、患者様が納得するまで、どこよりも丁寧にお話をお聞きして、どこよりも丁寧にご説明を致します。


患者様がしっかりと納得された上で初めて治療を開始致します。



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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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