虫歯予防の最前線/歯のエナメル質を再生し、強化する方法

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

虫歯が出来やすく、歯科検診の度に虫歯治療をして辛い思いをしている方もいるのではないでしょうか。虫歯は歯の一番外側にあるエナメル質が溶けるところから始まります。しかし、実は歯のエナメル質は虫歯になっても再生し、より強化させることができるのです。エナメル質を強化できれば、虫歯になる確率が格段に減るのです。今回はエナメル質の虫歯を再生させ、強化し、自然治癒させていく方法をお伝えします。ぜひ、参考にしてください。

1.エナメル質とは

歯の頭の部分を覆っている白いところで、体の中で一番硬い部分です。エナメル質の96%は無機質でヒドロキシアパタイトという成分で構成されています。カルシウムやリン酸を主成分にしています。エナメル質には神経がなく、虫歯になっても痛みはありません。エナメル質はその下の象牙質によって支えられ、象牙質には神経があります(象牙質知覚過敏など)。

2.エナメル質の虫歯の始まり

2-1.食事によりエナメル質が脱灰(だっかい)する

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全ての人のお口の中には虫歯菌が住んでいます。虫歯菌は人が食事をした時のたんぱく質や糖を食べ、糞として酸を出します。この酸によってエナメル質が溶かされることを脱灰(だっかい)といいます。

2-2.唾液の力でエナメル質を再石灰化(さいせっかいか)する

エナメル質はただ酸によって溶かされっぱなしではありません。溶かされたエナメル質は唾液の力によって再石灰化(さいせっかいか)するのです。再石灰化は溶け出してしまったエナメル質の成分を唾液の力によって元の状態に戻すことです。

唾液の力

唾液の中には歯を再石灰化させるカルシウムやリン酸が多く含まれています。そのため脱灰したエナメル質を再石灰化できるのです。しかし、副作用として歯石が出来てしまいます。プラークが溜まっているとそこにも唾液が石灰化させるので歯石が出来易くなってしまうのです。

2-3.脱灰と再石灰化のバランスが崩れると虫歯になる

間食が多く脱灰の回数が多かったり、飴など甘いものがお口の中に長く入っていて脱灰の時間が長いと、再石灰化する時間が足りなくなり、エナメル質に穴が開いて虫歯が始まります。

3.エナメル質を再生させる方法

 3-1.キシリトールガムで唾液を多く出す

脱灰してしまったエナメル質を再生しているのは唾液の中のカルシウムやリン酸などの成分です。そのためガムをかんで唾液を多く出せば溶けてしまったエナメル質は再生します。特にキシリトールガムは虫歯菌が酸を出すのを抑える効果があります。詳しくは「キシリトールの虫歯予防効果/100%で効果絶大」を参考にしてください。

3-2.間食を控え、脱灰を抑える

間食を控えることによって、エナメル質が脱灰する時間が短くなります。そのため再石灰化の時間が長くなりエナメル質が再生します。

3-3.食後歯磨きをして酸を出す細菌を減らす

食後歯磨きをすることで、お口の中の虫歯菌を減らし、酸が作られる量を少なくすることができます。その分再石灰化が多く起こりエナメル質を再生させることができます。

4.エナメル質を強化させる方法

4-1.フッ素の力を使う

エナメル質が再石灰化するとき唾液の中のカルシウムやリン酸を取り込みます。この時フッ素が加わるとより強いエナメル質の構造(フルオロアパタイト)になります。そのため虫歯を20%~50%も予防できるといわれています。現在はほとんどの歯磨き粉に入っています。その他にもフッ素入りのジェルや洗口剤もあります。詳しくは「フッ素塗布が虫歯を予防する効果と自宅でできるフッ素の使い方」を参考にしてください。

4-2.おすすめのフッ素用品

歯磨き粉:チェックアップスタンダード

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フッ素ジェル;チェックアップジェル

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洗口剤:フッ化ナトリウム洗口液

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5.エナメル質の虫歯は自然治癒を目指す

エナメル質が虫歯になったからと言って直ぐに削って詰める必要はありません。エナメル質の虫歯は自然に治すことができます。詳しくは「虫歯を自分で治してみる! 自然治癒させる為の6つの条件」を参考にしてください。

5-1.現在のエナメル質虫歯の状態を確認する

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レントゲンやダイアグノデントを使って虫歯の深さや硬さを確認します。虫歯は黒いからと言って全て削らなくてはいけないわけではありません。

5-2.唾液検査を行い原因を調べる

エナメル質が虫歯になってしまった原因を調べる必要があります。唾液検査によって原因が判れば、改善方法がわかります。

5-3.歯医者で高濃度のフッ素を塗る

歯医者でお口の中の歯石や歯垢を取り除いた後、高濃度のフッ素を塗り、歯を強化させていきます。

5-4.自宅で唾液検査によってわかった改善方法を行う

唾液検査の結果から分かった原因をもとに、自宅でできる改善方法を行っていきます。毎日続けることが大切です。

5-5.定期的に観察する

エナメル質の虫歯が進行していないか定期的に観察していきます。お口の中が虫歯にならない環境にできれば、ほとんどの場合、虫歯は進行しません。定期的に検査を行い、虫歯が硬く改善しているか確認していきます。詳しくは「これって虫歯?削らない初期虫歯とキレイに治す虫歯治療」を参考にしてください。

初期虫歯治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

6.虫歯になりやすいエナメル質

6-1.乳歯のエナメル質は永久歯の半分

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乳歯のエナメル質は永久歯に比べ1/2から1/3程しかありません。また、構造も永久歯に比べ緻密ではなく脱灰しやすいため、虫歯菌の酸に侵されると直ぐに脱灰し、気づくと直ぐに穴が開いてしまいます。その為、乳歯の虫歯を防ぐにはフッ素とデンタルフロスは欠かせないものです。詳しくは「乳歯の虫歯について母親が知っておかなければいけない6つこと」を参考にしてください。

6-2.生えたての永久歯のエナメル質が弱い

生えたての永久歯のエナメル質は熟成していないため、軟らかく虫歯菌の酸によって溶かされやすい状態にあります。また、歯に擦り減りが無いため溝が深いことと、生えてくる途中で歯茎に部分的に覆われて、プラークが溜まりやすい状態にあります。そのため生えている途中から虫歯になってしまうこともあります。生えている途中の永久歯は必ずフッ素を使い予防をする必要があります。

6-3.虫歯の90%は歯と歯の間からできる

虫歯の多くは歯と歯の間のエナメル質が溶けて始まります。デンタルフロスの習慣がない方は虫歯ができるのを繰り返しています。早くに歯の大切さに気づき、デンタルフロスと定期的なクリーニングを行っていけば体を守ってくれるエナメル質を失わなくて済みます。

7.エナメル質の病気

7-1.エナメル質形成不全症

エナメル質が何らかの原因で、先天的に影響を受けて、上手く作られなかった歯のことを、エナメル質形成不全と言います。これは乳歯にも、永久歯にも見られます。他の歯と比べて歯の質が弱かったり、柔らかかったりするので、虫歯になりやすく、虫歯の進行も早いです。 そのため定期的な観察と必要であればプラスチックの樹脂などでコーティングする必要があります。詳しくは「お子さんがエナメル質形成不全と言われたら知っておきたいこと!!」を参考にしてください。

エナメル質形成不全の治療する流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

7-2.酸蝕症(さんしょくしょう)

虫歯以外の酸によってエナメル質が溶かされて、減ってしまう病気です。ガラス工場やメッキ工場など酸性のガスがある場所で働いている方、スポーツドリンク、柑橘類を好んで飲食される方、嘔吐をよくする方は酸によってエナメル質が溶かされていきます。歯がクレーター状に削れていきます。

7-3.咬耗症(こうもうしょう)

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歯ぎしりや食いしばりがある方はエナメル質が擦り減っていいきます。歯ぎしりは硬いエナメル質どうしが、削り合うので擦り減りが早く、人によっては神経が出てしまうまで削れてしまう方がいます。原因が解明されていないために、マウスピースで保護する必要があります。

7-4.テトラサイクリン歯

永久歯が作られる妊婦の時期や8歳くらいまでにテトラサイクリン系の抗生物質をのむと歯がグレー色になることがあります。実はこの色はエナメル質ではなく象牙質に着色しています。近年は徐々にホワイトニングでも白くできるようになってきましたが、満足いくほどではないため、セラミックで白くする方が多いです。

8.エナメル質をきれいにする方法

8-1.歯のクリーニング

エナメル質には茶渋などのステインが付くことがあります。ステインは歯磨きでは取りにくいため、歯医者でクリーニングをしてもらい取る必要があります。ステインが付きやすい人はホワイトニング用の歯磨き粉を使うとエナメル質にステインが付きにくくなります。詳しくは「歯医者で行うクリーニングの6つの疑問とセルフクリーニングの4つの手順」を参考にしてください。

8-2.歯のトリートメント

エナメル質に傷がついているとステインが付きやすかったり、歯が濁って見えたりします。エナメル質は食べ物や歯磨き粉、歯医者でのクリーニングによって傷が付くことがあるのです。そのためエナメル質をトリートメントすることによって傷を修復し、エナメル質の表面をツルツルにすることができます。

8-3.ホワイトニングはエナメル質の色を抜く

歯のホワイトニング剤にはエナメル質内にある有機質を分解する作用があります。歯の色の原因は有機質のため分解されることによって歯が白くなります。ただ、この有機質は徐々に戻ってくるので定期的にホワイトニングすることによって白さは維持されます。詳しくは「ホームホワイトニングの6の秘訣」を参考にしてください。

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おかざき歯科クリニックの基本情報

ホームページ http://www.okazaki-dental.com
電話番号 045-828-6480
住所 神奈川県横浜市戸塚区品濃町1835ー29コーポレート東戸塚
診療時間 月・火・水・金 9:30~13:00 14:30~19:00
                     土          9:00~13:00 14:00~18:00 
     木・日・祝日:休診日

院長経歴

岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任

まとめ

エナメル質は歯を守る最前線で戦っています。そのため体の中で最も硬くなっています。ただ、このエナメル質の砦を虫歯菌に破られてしまうと、虫歯が一気に広がります。皆さんもエナメル質と一緒に歯を守り、生涯自分の歯で過ごせるように虫歯予防をしてみてはいかがでしょうか。

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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

コメント

  1. ない より:

    歯のエナメル質の部分だけが欠けました(痛くないので)。
    エナメル質の再生という自然な方法で、欠ける前の形に直すにはどんな治療法がありますか?
    歯の矯正みたいになんとかなりませんか?

    1. 歯のブログ より:

      エナメル質の再生とは初期の虫歯になり、弱くなった部分をフッ素やミネラル成分で硬くするということです。
      なくなった部分を元に戻すというものではありません。
      かけてしまった部分はプラスチックなどで詰めるという方法を行います。

  2. 森田 より:

    現在9歳の娘は、小さい時から、お茶の色素が歯に残りやすく、2ヶ月ごとに歯医者でクリーニングを受けています。
    毎回、歯をクリーニングする時に、歯も少しずつ削られているのではないか、と気にしています。

    1. 岡崎弘典 より:

      心配ですね。歯の表面の着色を落とすには研磨剤の入ったペーストでクリーニングをすることがあります。
      その他に細かいパウダーを歯に当てて落とす方法などがあります。
      歯の表面が削られることが心配とのことなので、歯のトリートメントとホームホワイトニングをお勧めします。
      トリートメントは歯の傷を修復し、着色をつきにくくします。http://hanoblog.com/apagard-renamel-10848
      また、ホームホワイトニングは着色を落とす効果もあります。http://hanoblog.com/homewhitening-effect-355

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