以前、虫歯は自然には治らないので早期発見、早期治療が必要だと言われてきました。しかし、実は虫歯も自然治癒するのです。お口の中の環境さえ整っていれば歯を削らずに自然治癒を目指すことができるのです。それを知っている我々歯科関係者は小さな虫歯は削らず自然治癒させているのです。そして、歯を削らないことは歯を長持ちさせるために多くのメリットがあり、将来自分の歯を失わないためにはとても重要なことなのです。今回は虫歯を自然治癒させるための条件と歯を削らない治療法、削らなければいけない場合をお伝えします。ぜひ参考にしてください。
1.自然治癒には再石灰化が重要
歯は食事のたびに歯が溶ける脱灰(だっかい)と溶けた歯を唾液の力で戻す再石灰化(さいせっかいか)を繰り返しています。このバランスが崩れた時に虫歯が進行していきます。虫歯を自然治癒させるには出来るだけ脱灰を抑え、再石灰化を多くさせることが重要です。そして虫歯を再石灰化させるには虫歯予防以上に歯を強くしていく必要があります。ただし、自然治癒しているかどうかはレントゲン等で確認していかないと虫歯が大きく進行してしまい、急激な痛みや命の危険さえ及ぶこともあります。かかりつけの歯医者で定期的な確認をしてもらってください。
2.虫歯を自然治癒させる為の6つの条件
2-1.プラークを歯ブラシやデンタルフロスでしっかり落とせること
歯はプラーク(歯垢)によって出される酸によって溶かされてしまいいます。虫歯を自然治癒させるにはこのプラークを徹底的に無くして、お口の中を歯が溶ける酸性から、再石灰化を促進させるアルカリ性にしておく必要があります。アルカリ性にしておくと虫歯の部分に唾液中のリンやカルシウムが軟らかくなった虫歯に沈着し、虫歯の進行を抑えていきます。詳しくは「歯医者は絶対やっている!デンタルフロスで虫歯や歯周病を防ぐ方法」を参考にしてください。
2-2.フッ素を効果的に虫歯に作用させること
フッ素塗布は初期虫歯を治す、歯を強くする、虫歯菌の活動を抑える3つの効果があります。毎日少量のフッ素を虫歯に作用させることにより、自然治癒させることができます。最も効果が高いのは歯磨き後にフッ素のジェルを塗りこむことで、ジェルタイプは唾液に流されにくいため歯に長くフッ素を作用させることができます。詳しくは「フッ素塗布が虫歯を予防する効果と自宅でできるフッ素の使い方」を参考にして下さい。
フッ素塗布の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
2-3.間食や糖分を控え健康的な食事をとること
お口は食事のたびに酸性となり歯が溶かされます。溶けた歯は唾液のミネラルによって元に戻ります。食事の回数が多くなったり、だらだらと長時間食べたり飲んだりしていると歯は溶け続けてしまいます。虫歯を自然治癒させるには間食せず3度の食事をしっかりとることが重要です。食事は噛みごたえがあり、ミネラル成分が豊富な食べ物を取ることによって汚れが付きにくかったり歯を強くしたりして、虫歯の自然治癒を促進します。
2-4.唾液を多く出すためのキシリトールガムを噛むこと
キシリトールには虫歯の発生や進行を抑える効果がります。100%のキシリトールガムを食後噛むことによってキシリトールの効果にプラスして唾液が多く出されて、虫歯の自然治癒を助けてくれます。また外出先でどうしても歯磨きができない時などにはキシリトールガムを噛むことで多少の虫歯の進行を抑えることができます。詳しくは「キシリトールの虫歯予防効果/100%で効果絶大」を参考にしてください。
2-5.横や斜めになっている親知らずがないこと
親知らずが横や斜めに生えていると親知らずや親知らずの前の歯は虫歯になりやすくなってしまいます。その部分の虫歯を自然治癒させることは難しく、虫歯菌の温床になってしまいます。そのような親知らずは抜歯をしておきます。詳しくは「親知らずが原因で起こる6つの痛みのメカニズムと痛くない抜歯法」を参考にしてください。
親知らず抜歯の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
2-6.金属やプラスチックの劣化による虫歯がないこと
お口の過酷な環境では金属やプラスチックは劣化してしまい、その隙間から虫歯になってしまいます。虫歯菌の温床となり、自然治癒を妨げてしまいます。できるだけ劣化の少ないセラミックで治療をして、虫歯菌が増えないようにします。詳しくは「70%の人が行っているセラミック治療/彼らが銀歯にしない6つの理由」を参考にしてください。
劣化した銀歯の治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
3.削らずに虫歯の進行を抑える方法
3-1.マウスピースで虫歯にミネラルを補給する
歯磨き後にマウスピースを使ってミネラル成分やフッ素を浸透させる方法が3DS(デンタルドラッグデリバリーシステム)です。歯医者でマウスピースを作り、寝る前によく歯磨きをした後、マウスピースの中に薬を入れて10~30分程度浸透させてから就寝します。
3-2.プロバイオティクスによる予防
プロバイオティクスとは悪い菌(悪玉菌)が増えたとき、良い菌(善玉菌)を増やして細菌のバランスを整えることです。口の中の場合、歯周病菌や虫歯菌などの悪玉菌が増えると歯や歯茎に悪い影響が及びます。
プロバイオティクスで善玉菌を増やすことによって、口の中の悪玉菌の比率を相対的に減らし、口の中のバランスを整え、正常な状態に近づける予防法です。
3-3.高濃度のフッ素を直接歯に作用させるデュラファット
急速に進行しやすい子供の虫歯に効果的です。高濃度のフッ素を直接虫歯に塗りこみます。キャラメルみたいな色をしています。その部分には24時間、歯磨きをしないようにしてフッ素を浸透させて歯を硬くしていきます。
4.虫歯は進行すると自然治癒しない
4-1.虫歯の進行が止まっているか定期的に歯医者で確認をする
虫歯は神経までの距離が1/3程度までの深さであれば自然治癒が可能な場合があります。だだしそれ以上だと再石灰化やフッ素の力が及ばないために自然治癒は難しくなります。また、人工の詰め物や被せものの隙間からの虫歯は自然治癒ができません。歯医者で定期的に虫歯の進行が止まっているか確認していく必要があります。
小さな黒い点からの虫歯治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
4-2.神経のない歯は自然治癒しない
神経がなくなってしまうと自然治癒する能力は失われてしまいます。神経があることによって歯を硬くしたり、神経の空洞を狭くして新たな象牙質の部分を作ったりしてできるだけ細菌が神経の内部に入らないようにしています。神経がない歯は表面のエナメル質や被せものに隙間ができると虫歯菌が入ってきても防御することができないため虫歯が進行してしまいます。詳しくは「歯の神経を抜く前に知っておきたかった7つのことと最新治療法」を参考にしてください。
4-3.歯医者で定期的にクリーニングをして自分で取りきれないプラークを取ってもらう
100%プラークを残さない歯磨をすることは無理なのです。磨き癖や歯磨きで届かないところは歯医者で定期的にプラークを取ってもらう必要があります。また、虫歯の部分は歯の表面が凸凹したり、穴が開いている場所もあるかもしれません。自然治癒させるにはそういう部分もしっかり汚れを取る必要があります。詳しくは「歯医者で行うクリーニングの6つの疑問とセルフクリーニングの4つの手順」を参考にしてください。
5.唾液検査で虫歯のなりやすさを確認しておく
虫歯を自然治癒させるには自分自身の虫歯のなりやすさを知っておく必要があります。虫歯の進行は虫歯菌だけではないため、唾液の量と力とともに虫歯菌の数、食事の頻度、虫歯の経験、汚れのつき具合を分析し、虫歯になる確率を出し、自分の虫歯のなりやすさがわかります。科学的根拠に基づいて虫歯の進行を抑えることにより自然治癒を促進させます。このプログラムは予防先進国のスウェーデンで開発されたカリオグラムというソフトです。
おすすめクリニック
おかざき歯科クリニックの基本情報
ホームページ http://www.okazaki-dental.com
電話番号 045-828-6480
住所 神奈川県横浜市戸塚区品濃町1835ー29コーポレート東戸塚
診療時間 月・火・水・金 9:30~13:00 14:30~19:00
土 9:00~13:00 14:00~18:00
木・日・祝日:休診日
院長経歴
岡崎 弘典
日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任
まとめ
縄文時代には虫歯は多くありませんでした。食事も糖分はほとんどなく、生肉や堅い木の実などで小さな虫歯は歯がすり減ることによって無くなってしまうのです。現代人は甘いものも多く、ほとんどが軟らかい食事です。しかし、その分虫歯の研究が進み、ある程度の虫歯であれば自然治癒させることもできます。