歯を残したい!歯周病予防は歯を失わないための最も効果的な方法

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

歯周病は自分には関係ないと思っている方は多いのではないでしょうか。日本で歯を失う一番の原因は歯周病なのです。実は歯周病は進行してからの治療になると再生療法など外科的な方法が必要となり、全てを回復させることが難しくなり、最も効果的な方法が予防をしていくことなのです。先進国では70〜80%の方がメンテナンスを受けていますが、日本ではまだ10%程度なのです。平成23年度の歯科疾患実態調査では日本人の平均寿命に近い80歳から84歳までの残っている歯の数の平均は12.2本です。将来自分の歯で美味しい食事を摂るためには早い時期からのメンテナンスが欠かせません。今回は歯周病予防について詳しくお伝えします。ぜひ、参考にしてください。

1.歯周病予防を絶対行ったほうがいい方

1−1.歯周病検査で歯周ポケットから出血があった方

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歯周病の検査では歯周ポケットと同時に歯周ポケット内の出血を確認します。歯周ポケット内の出血は歯周病が起こりやすい歯茎の状態を示しています。歯周ポケット内から出血が起こらないような状態を維持することが歯周病予防にとってバロメーターとなります。

歯周ポケット内の出血は歯ブラシの時の出血とは異なります。歯周ポケット内の出血は歯と歯茎の境目からの出血で自分では気づかないことが多いです。詳しくは「危険信号!歯茎からの出血を止める自宅でできる4つの手順と正しい治療法」を参考にしてください。

1−2.ご家族が歯周病になっている方

歯周病は遺伝的な要因によってかかりやすい人もいます。特にご両親が歯周病にかかっていたり、歯を失っている方は注意が必要です。最近ではDNA検査等もできるようになっています。また、歯周病菌は感染します。パートナーが歯周病に感染している場合は感染する場合もあります。特にご自身が歯周病の場合は子供に歯周病菌を感染させないことが重要です。

1−3.被せ物や詰め物が多い方

銀歯やプラスチックは細菌がつきやすいため、歯磨きをしても細菌が残ってしまい歯周病になりやすい状態です。歯周病を予防するには虫歯予防も重要です。また、セラミック等で細菌が付きにくい材料で治療することもおすすめです。詳しくは「オールセラミック/美と健康のために」を参考にしてください。

1−4.将来自分の歯を残したい方

日本人の30歳以上の80%が歯周病になっており、歯を失う原因で最も多いのが歯周病です。歯周病を予防することは将来自分の歯でおいしい食事をとるための一番の近道です。

2.歯周病の予防は歯茎と体を整える

歯周病は歯周病菌と歯周病菌に対する体の抵抗力のバランスによって進行します。歯周病菌は誰もが持っている口の中の細菌です。この歯周病菌を歯ブラシなどでできるだけ減らすようにコントロールすることです。もう一つの体の抵抗力は若い時には強く、多少のプラークが残っていても歯茎が腫れる程度(歯肉炎)で中の骨まで溶けることはありません。しかし、年齢とともに抵抗力が落ち、30歳を過ぎた頃から若い時と同じような歯磨きの仕方では中の骨まで歯周病が進行してしまうのです。

3.自宅でできる歯周病予防

3−1.歯磨きのテクニックの向上

歯周病の最も大きな原因はプラークです。このプラークを取るテクニックをいかに早く身に付けるかで歯周病の予防ができるかどうか変わってきます。多くの方が自己流で磨いていますが、歯並びや歯茎の状態によって磨き方は変わってきます。歯医者で担当の歯科衛生士に自分の苦手なところや、気づかず残っているプラークをどのように取ればいいのか相談してみてください。詳しくは「虫歯や歯周病を徹底的に防ぐ「歯磨き力」をつける6の秘訣」を参考にしてください。

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デントEXシステマ GenkiJ 430円
GenkiJは毛先が細いにもかかわらず、コシがあるので歯肉へのマッサージ効果が高い歯ブラシです。通販等で購入可能です。

3−2.デンタルフロスの使用

日本人の30歳以上の80%が歯周病とのデータがあります。この主な原因はデンタルフロスの習慣が先進国の中で低いことです。歯周病の90%以上が歯と歯の間から進行します。デンタルフロスを使わなければ最もプラークを取りたい部分を残してしまうことになるのです。歯周病を予防する上ではデンタルフロスは欠かせないものです。詳しくは「歯医者は絶対やっている!デンタルフロスで虫歯や歯周病を防ぐ方法」を参考にしてください。

3−3.歯周病に効果的な歯磨き粉

最近の歯磨き粉はプラークの除去や殺菌、歯茎の炎症を抑えるなど効果的な成分が含まれているものが多くなりました。歯磨きだけで100%プラークを取り除くことは困難なため、歯磨き粉を歯茎に浸透させるように使うと効果的です。また、最後のすすぎはごく少量にして、歯磨き粉の成分が口の中に残るようにすると、歯磨き後も効果が持続します。

おすすめ歯磨き粉

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コンクールジェルコートF 1,080円
殺菌作用が高く、フッ素も配合されているため歯周病予防に効果的な歯磨き粉です。通販等で購入可能です。

3−4.サプリメントの使用

口の中の悪玉菌を善玉菌に変えていくのがバイオガイアというサプリメントです。バイオガイアに含まれる善玉菌であるロイテリ菌が、口の中にいる悪玉菌の歯周病菌と置き換わることによって、口の中の環境を変え、歯周病を予防していく方法です。ブラッシングやクリーニングで口の中の細菌数を減らしてから、タブレットを少しずつ溶かしながら舐めて悪玉菌を善玉菌に置き換えていきます。

おすすめサプリメント

バイオガイアプロデンティス1,080円
生きる乳酸菌(Lロイテリ菌)を使った健康補助食品です。通販等で購入可能です。

3−5.健康的な体作り

 歯茎は体の免疫力が下がると症状が出やすい部分です。風邪をひいたり、感染症にかかったりすると歯茎を守っていた免疫細胞が他の部分に移動し、歯茎の防御が手薄になります。そこに歯周病菌が入り込むと歯周病が進行してしまいます。また、糖尿病や骨粗鬆症、リウマチなども歯周病が悪化してしまう原因となります。このように健康な体づくりは歯周病予防には絶対欠かせないことです。

4.歯医者で行う歯周病予防

4−1.歯石の除去

歯石はプラークが唾液の成分によって石灰化したものです。歯石はプラークの住みかとなり、さらに新たな歯石を積み重ねます。一度歯石になってしまうと自分では取れないため、定期的に取り除く必要があります。歯石が付きやすい人は3ヶ月に1度程度、歯磨きが上手で歯石が付きにくい人は4〜6ヶ月に1度程度、歯石除去をすることによって歯周病を予防します。詳しくは「絶対歯石を取ったほうがいい本当の理由」を参考にしてください。

4−2.歯周ポケット内のプラーク除去

歯周ポケット内の細菌が最も歯周病に影響します。毛先が細い歯ブラシである程度の歯周ポケット内の細菌を取り除くことはできますが、全てを取り除くことはできません。歯周ポケット内の細菌は嫌気性菌(けんきせいきん)で酸素を嫌います。歯医者で超音波の振動を加えながら、歯周ポケット内を攪拌するように細菌を取ることによって、歯周病菌の活動を弱めることができます。

4−3.歯ぎしり用マウスピースの使用

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歯ぎしりやくいしばりによって歯が揺らされ、歯と歯茎の間に隙間ができます。そこに細菌が侵入すると歯周病は進行しやすくなります。特に歯ぎしりが強い方は歯周病が重症化する確率が高くなります。そのため夜寝るときに歯ぎしり用のマウスピースを使い歯や歯茎を保護する必要があります。詳しくは「歯ぎしりによって起こる怖い出来事/マウスピースがあなたの歯を守ってくれる」を参考にしてください。

5.予防が難しい特殊な歯周病

5-1.急性壊死性潰瘍性歯肉炎(きゅうせいえしせいかいようせいしにくえん)

急に歯と歯の間の歯茎に潰瘍ができて、痛みや口臭を伴う歯肉炎です。原因はよくわかっていませんが、プラーク、ストレス、喫煙、栄養障害などが考えられています。2、3日で急速に進行します。症状が出ている間はお口のなかを清潔に保つようにしますが、歯肉炎部は痛みが強いためガーゼなどで、拭う程度にします。感染防止のために抗生物質や痛み止めが処方されます。

5-2.慢性剥離性歯肉炎(まんせいはくりせいしにくえん)

歯茎の表面の皮がはがれ落ちて、痛みを伴う歯肉炎です。歯茎がヒリヒリしたり、水泡が出来ることもあります。主に、生理不順あるいは閉経後の女性に多くみられ、2、3本の部分的な歯茎から全体の歯茎に広がっている場合もあります。歯ブラシが当たっただけでも痛みがあるため、軟らかい歯ブラシで優しく磨きます。完治するのは難しく再発を繰り返します。

6.歯周病の治療法

6-1.歯周病の進行を確認するための歯周ポケットの検査

歯周ポケット検査は歯周ポケットの深さ、歯茎からの出血、歯の揺れの有無を調べていきます。

歯周ポケット検査:歯と歯茎の境目の深さを測っていきます。4mm以上のポケットになるとご自身ではポケット内の細菌を取ることができず、歯周病が進行しやすくなります。
歯周ポケットの出血:出血があると歯周病が進行形であることを示します。治療はこの出血を止めることを目標にしていきます。
歯の揺れ:歯の周りの骨が溶けてくると歯が揺れてきます。歯周病の治療によって歯の揺れを止めるようにしていきます。
詳しくは「歯周ポケットは口臭や歯周病の始まり/歯周ポケット改善方法」を参考にしてください。

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6-2.歯茎の腫れを確認するためのお口の中の写真

お口の中の写真を撮って歯茎の腫れの状態を確認していきます。治療後や定期的に写真を撮ることによって治っている状態や、変化を診ていきます。

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6-3.骨の吸収状態を確認するためのレントゲン撮影

歯を支えている骨の高さは歯茎があるために見た目では確認できないため、レントゲンを撮って骨の高さをみていきます。歯周病は症状が出にくい病気のためレントゲンを撮って初めて骨が溶けていることに気づくこともあります。

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6−4.歯周病の状態の説明

歯周病検査の結果をご説明していきます。現在歯周病がどこまで進行し、どのようにしていけば進行を止められるのか、治療回数などをご相談しながら決めていきます。

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6−5.自宅でできる口腔ケアの説明

歯周病の原因はプラーク(歯垢・しこう)という細菌の塊です。食事をするとプラークは出来てしまいます。このプラークは毎日自分でしっかり取ることが歯周病治療の基本中の基本です。歯石を取ったり、歯周ポケットの中をきれいにしてもご自身でプラークが取れなければすぐに元に戻ってしまいます。ご自身に合ったプラークの取り方を一緒に考えていきます。

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6−6.ご自身では取れない歯石除去

歯石はプラークと唾液や血液が固まってできたものです。歯ブラシやデンタルフロスで歯茎を引き締めた後、歯石を取っていきます。ご自身の口腔ケアができていないと歯石を取るときに痛みや出血が多くなってしまいます。また、すぐに歯石が付いてしまいただ歯石除去を繰り返すだけで歯周病が改善しなくなってしまいます。詳しくは「歯石取りって痛い?痛くなく歯石除去をしてもらうための4つの秘訣」を参考にしてください。

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6−7.歯周病がどれくらい改善したか確認します

歯周ポケット検査を行い、歯周ポケットが浅くなったか、歯茎からの出血が無くなったか、歯の揺れは落ち着いてきたかなど再評価を行います。

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6−8.歯周再生療法

歯石を取っただけでは歯周病が改善しない方は、歯周再生療法を行います。歯の周りの骨が無くなってしまったところに骨を作る方法です。外科的な治療のため必要性が高い方や希望のある方のみ行います。詳しくは「歯周病で溶けた骨を治療するエムドゲイン再生療法とは!」を参考にしてください。

 

歯周病で溶けた骨を再生させるエムドゲイン再生療法の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

6−9.定期的なクリーニング

治った歯周病の状態を維持するために定期的にクリーニングをしていきます。歯周病はそのままにしておけば必ず進行してしまいます。定期的に歯茎の中の汚れを取ることによって歯周病の進行を抑えていきます。

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おかざき歯科クリニックの基本情報

ホームページ http://www.okazaki-dental.com
電話番号 045-828-6480
住所 神奈川県横浜市戸塚区品濃町1835ー29コーポレート東戸塚
診療時間 月・火・水・金 9:30~13:00 14:30~19:00
                     土          9:00~13:00 14:00~18:00 
     木・日・祝日:休診日

院長経歴

岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任

 まとめ

歯を失う原因の多くは歯周病か虫歯です。両方ともに科学的に検査を行い予防処置を行えば、防げる病気です。しかし、進行してからの治療になれば歯の寿命は短くなってしまいます。自分の歯は親か自分しか守ることができず、予防の大切さを小さな頃から教えてあげることによって、自分の歯を失わずに一生を過ごせる方が増えてきます。歯医者ができるのはその手伝いをすることだけです。生涯自分の歯で過ごすのか、入れ歯やインプラントに頼るのかは予防次第で大きく変わってしまうのです。

歯茎下がりは歯周病の始まり

歯周病治療

歯茎が下がると歯がしみやすくなります。あなたは大丈夫でしょうか?


これが歯周病の始まりなのです。


歯周病は虫歯と違って、重度になるまで痛みなどの自覚症状がないため、気付いたら歯が抜ける寸前だったということも少なくありません。歯を支える骨が溶けて、最悪歯を残すことが難しくなるケースもあります。


これから20年、30年、生涯にわたって自分の歯で過ごすためには、今が大切です。 ひどくなってしまう前に、いちど検診を受けることをおすすめします。



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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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