歯周病専門医が行っている最新治療法と一般歯科との治療の違い

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

歯周病になってしまったが、かかりつけの歯医者ではどうにもならないと言われて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。歯周病は歯の周りの骨を溶かしていく病気です。実は、歯周病の治療を専門に行っている歯周病専門医がいることをご存知でしょうか。歯周病専門医は特に溶けてしまった骨を再生させる技術を持った歯科医師です。今回は歯周病専門医が行っている最新治療と一般歯科との違いをご紹介します。ぜひ参考にしてください。

1.歯周病の治療とは

歯周病とは歯を支えている骨が歯周病菌によって溶かされ、歯茎が腫れたり、歯が揺れてきたりして、最終的には歯が抜けてしまう病気です。歯周病の治療は溶けてしまった歯の周りの骨を再生させたり、これ以上歯周病を進行させないようにする治療です。詳しくは「30代以上の方必見!歯周病に負けない5つの知識と3つの治療法」を参考にしてください。

2.歯周病専門医が行っている最新治療法

2−1.溶けた骨の状態を3次元的に診断するCTレントゲン

歯周病によって溶かされた歯の周りの骨は場所によって大きく溶けていたり、部分的に溶けていたり、様々な溶け方をします。3次元的なCTレントゲンを撮影することによって正確な診断が行えます。歯石除去だけで改善できるのか、骨を再生させる治療が必要なのか確認した上で治療を行うことができます。

一般歯科では

一般歯科では2次元のレントゲンで診断します。どの部分に骨の吸収があるのかはある程度経験に頼るしかありません。そのため診断の精度が下がってしまいます。

2−2.マイクロスコープによる超精密歯周病治療

歯周病で溶けてしまった骨を再生させる治療は高い技術を要します。歯の周りに歯石や汚れを取り残してしまうと骨を再生することができなくなります。そのため歯周病専門医では細かい部分を確認するためマイクロスコープや拡大鏡を使って精密な治療を行っています。

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一般歯科では

近年は治療の時に拡大鏡を使っている歯医者が多くなりました。ただし、マイクロスコープはまだ使っている歯医者は少ないようです。正確な治療を行うには拡大した状態で歯や歯茎を確認する必要があります。

2−3.歯周病で溶けた骨を再生させるエムドゲイン

エムドゲインとは歯周病で溶けた骨を再生させる薬です。溶けてしまった部分の歯茎を切り、中の汚れを取り除いてからエムドゲインを入れ、骨を再生させます。歯周病専門医と一般歯科の一番の違いが骨を再生させることができることです。詳しくは「歯周病で溶けた骨を治療するエムドゲイン再生療法とは!」を参考にしてください。

歯周病で溶けた骨を再生させるエムドゲイン再生療法の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

一般歯科では

一般歯科では歯周病で骨が溶けてしまったところは、メンテナンスで様子を見るか、歯茎を開いて中の汚れだけを取ります。実はこれだけでも効果がある場合も多いのです。しかし、骨を再生させることは歯周病専門医の得意分野です。

2−4.下がった歯茎を再生させる歯肉移植

歯周病などの原因によって歯茎が下がり、歯が長くなってしまうことがあります。歯周病専門医は歯茎下がりの部分に、他の部分の歯茎を移植し、歯の根を覆い、見た目にきれいな状態にすることができます。詳しくは「下がった歯茎や骨を再生させる方法」を参考にしてください。

一般歯科では

一般歯科では歯茎下がりの部分はこれ以上下げないようにメンテナンスで様子を見ることが多いです。

2−5.治療した歯周病を再発させないメンテナンス

歯周病専門医では歯周病治療の後のメンテナンスを重要視しています。歯周病は再発しやすい病気です。定期的に歯周病の状態を確認し、歯のクリーニングをします。単に歯石を取るだけではなく、歯茎の出血や歯周ポケットの状態まで詳しく検査をしていきます。詳しくは「3ヶ月に一度!歯医者でPMTCを行った方がいい6つの理由と費用や手順」を参考にしてください。

一般歯科では

一般歯科では歯周病に対する歯医者の考え方によってしっかりと検査や治療を行う歯医者と簡単に歯石だけを取る歯医者があります。自分の考え方にあった歯医者を選んでください。

2−6.歯周病の状態でも行える歯列矯正

歯並びが悪いと歯周病は悪化しやすく、歯茎の再生治療もできないことがあります。歯周病専門医では歯茎を安定させるために歯列矯正を行う場合があります。歯並びが改善すれば自分で行うメンテナンスも行いやすくなります。詳しくは「大人の歯の歯列矯正!歯並びを治す5つの方法と費用と期間」を参考にしてください。

一般歯科では

一般歯科では歯列矯正を歯列矯正専門医に依頼することが多く、うまく連携が取れないこともあります。

2−7.歯周病で失った歯を再生させるインプラント

歯周病で歯を失った場合、周りの歯に負担がかかり連鎖的に次々と歯を失ってしまう場合があります。そのためインプラントで失われてしまった歯を補い、他の歯の負担を軽くすることによって、歯周病の進行を抑えます。詳しくは「やってみたいインプラント治療/実際かかる費用はいくら」を参考にしてください。

奥歯の噛み合わせをインプラントで改善する方法と実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

一般歯科では

一般歯科でもインプラント治療を行うところが多くあります。しかし、歯周病によって溶かされた骨を再生させながらインプラントを行う治療は歯周病専門医の得意分野です。

2−8.歯周病の歯でも行えるセラミック治療

歯周病になった歯は歯の根元が下がり、虫歯になりやすくなります。劣化のしにくい精度の高いセラミック治療を行うことによって虫歯の再発を防ぎます。詳しくは「前歯をオールセラミッククラウンにしたほうがいい7つの理由/費用と期間」を参考にしてください。

一般歯科では

一般歯科ではほとんどの歯医者でセラミック治療は行われています。歯周病専門医のセラミックはセラミックと歯茎を調和させた治療が多く、より歯茎に優しい治療が行われています。

3.歯周病専門医の治療の流れ

3−1.歯周病の検査

歯周病専門医では多くの検査を行います。歯周ポケットの深さ、口の中の写真、レントゲン、歯周病菌、歯の揺れなどの検査を行います。まずは現状を把握することから始まり、どのように改善できるかを話し合います。 

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3−2.徹底した歯磨き:プラークコントロール

歯周病の原因は歯垢です。毎日自分で行う歯垢除去ができなければ歯石を取っても、骨を再生させてもすぐに戻ってしまいます。歯周病専門医ではまずこのプラークコントロールを徹底的に行い、歯垢除去率が15%〜20%以下までできるように指導していきます。

3−3.見える範囲の歯石除去

プラークコントロールが改善してくると歯茎の腫れが治り、歯茎の中に隠れていた歯石が見えてきます。また、歯周ポケットに隠れた歯石も器具が届く範囲で取り除いていきます。歯石を取り除くことによって、より歯茎が引き締まります。

3−4.再検査で改善状況を確認

再度検査を行います。初めの検査に比べどこまで改善したかを確認していきます。歯周病の進行が中程度の方であればここまでの治療でメンテナンスに移行する場合が多いです。

3−5.歯茎や骨の再生

今までの治療で改善できなかった部分は歯茎や骨の再生を行います。外科的に歯茎を切って中の状態を確認後、エムドゲインや人工の骨などを使って溶けてしまった骨を再生させます。また、下がってしまった歯茎を移植によって再生させることもあります。

3−6.歯列矯正やインプラント

歯周病の悪化を防ぎ、噛み合わせの安定をさせるために歯列矯正やインプラント治療を行います。噛み合わせが悪いと歯周病が再発しやすくなります。歯列矯正やインプラントによって歯周病が進行しない安定した歯並びにします。

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3−7.メンテナンス

歯周病にとって最も重要なのがメンテナンスです。口の中には歯周病菌がいるため、一度歯周病になった方は再発しやすいのです。1〜3ヶ月程度の定期的なメンテナンスによって歯周病菌の増殖を防ぎ、健康な歯茎を維持します。

 まとめ

歯周病専門医がすべての歯を残せるわけではありません。ただし、一般歯科では治すことができない、ギリギリの部分を治すことができるのが歯周病専門医です。歯を抜く前に一度歯周病専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

歯茎下がりは歯周病の始まり

歯周病治療

歯茎が下がると歯がしみやすくなります。あなたは大丈夫でしょうか?


これが歯周病の始まりなのです。


歯周病は虫歯と違って、重度になるまで痛みなどの自覚症状がないため、気付いたら歯が抜ける寸前だったということも少なくありません。歯を支える骨が溶けて、最悪歯を残すことが難しくなるケースもあります。


これから20年、30年、生涯にわたって自分の歯で過ごすためには、今が大切です。 ひどくなってしまう前に、いちど検診を受けることをおすすめします。



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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

コメント

  1. 眞二 より:

    大変勉強になりました。

    1. 岡崎弘典 より:

      ありがとうございます。

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