あなたの八重歯はこうして治る/写真でわかる矯正治療

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

歯並び、特に八重歯を矯正治療したい人は多いのではないでしょうか。八重歯とは歯並びが悪く、犬歯が歯茎の上の方から出てきている状態です。実は八重歯は犬歯という歯で歯の中でも最も長く、噛み合わせにとってとても重要な歯なのです。この犬歯が八重歯という状態で噛み合わせに参加できないと、ほかの歯に負担がかかり、将来歯を失う可能性が高くなるのです。今回は八重歯の矯正治療を写真で詳しくご説明します。ぜひ、参考にしてください。

1.八重歯を矯正治療で治す方法

1-1.ブラケット治療で八重歯を治す

中学生以上の八重歯を矯正治療で治す場合、八重歯が目立つ方であれば第一小臼歯(八重歯の奥の歯)を抜歯して、矯正治療を行うことが一般的です。八重歯=犬歯は根が長く、太いため噛み合わせにとって重要で、あまり抜歯をすることはありません。第一小臼歯を抜歯した隙間を使って八重歯を下してきます。歯の表面にブラケットという器具を付け、歯1本、1本に力を加え、歯を動かしていきます。

金額は60万円~80万円程度です。その他に検査代3万円程度、処置料4,000円~5,000円程度がかかります。期間は2年~3年程度です。

1-2.舌側矯正で八重歯を治す

ブラケットを歯の内側に付けて、八重歯を治していきます。歯の表面に装置を付けないので、目立つことなく矯正治療ができます。舌がある内側に装置を付けなくてはいけないため、唇側にブラケットを付ける一般的なやり方より違和感は強くなってしまいます。期間と費用は一般的なブラケット矯正よりかかりますが、最終的にはキレイに治療をすることができます。

金額は100万円~120万円程度です。その他に検査代3万円程度、処置料5,000円~10,000円程度がかかります。期間は2年~3年程度です。

1-3.マウスピース矯正で八重歯を治す

マウスピース矯正で八重歯を治す場合、歯を大きく動かすことができないため、歯を抜かず、歯を小さく削ることによって八重歯を治していきます。歯を大きく移動することができないため、軽度の八重歯を治すことになります。

金額は70万円~80万円程度です。その他に検査代3万円程度、処置料5,000円程度がかかります。期間は2年~3年程度です。マウスピースの使用頻度によって期間は大きく変わります。詳しくは「マウスピース矯正/30代から60代の女性に人気の透明な歯列矯正」を参考にしてください。

2.八重歯をブラケットで治す治療の写真

2-1.始めの状態

左上の八重歯は歯茎から出てくるような位置にあり、前歯に凸凹もあります。このままの状態でいると前歯の歯並びはより悪くなっていきます。将来的には虫歯や歯周病のリスクが高くなり、八重歯を抜歯する必要性が出てきます。

矯正治療を始める前に

矯正治療は時間と費用が掛かります。そのため治療前に精密な検査を行います。お口の中の写真、お顔の写真、レントゲン写真、CT、お口の中の模型。その上で診断を行い治療方法、治療期間、費用を説明します。納得したうえで治療は開始されます。矯正治療を途中でやめてしまうと、初めの状態より悪くなってしまうこともあります。ご家族で話し合ったうえで治療をすることをお勧めします。

図1

 

図2

2-2.上下の第一小臼歯を1本ずつ、合計4本を抜歯して矯正治療を開始

今回は4本の小臼歯を抜歯して矯正治療を行います。抜歯の場所や本数は凸凹の状態や、奥歯の位置などによって人それぞれ異なります。

歯の表面にブラケットという装置を接着剤で付けます。この写真では金属のブラケットを付けていますが、透明で目立たないなブラケットもあります。ブラケットは最終的に歯から取り外すので、取れやすくできています。硬いものや粘着性のあるものは避けてください。取れてしまうと治療の期間が長くなってしまいます。

図3

2-3.八重歯を動かす

手前の歯と半分以上重なっていた八重歯が抜歯した歯の部分に移動してきました。

人によって歯が動くスピードは違いますが、大体1か月に1mm程度です。骨が軟らかい10代の方が歯が動きやすいため、治療期間も短く、痛みも少ないことが多いです。

図4

2-4.八重歯のねじれをとる

ねじれていた八重歯をまっすぐにします。抜歯した歯の部分まで八重歯が移動してきました。

矯正用のワイヤーは歯並びが整ってくると徐々に太いものに替えていきます。ワイヤーを替えた時は痛みが出ることが多いのですが、3日前後で痛みは引いてきます。詳しくは「歯科矯正の痛みについて知っておきたい4項目」を参考にしてください。

図5

2-5.残っているすき間を閉じていく

歯と歯の間に隙間が残っているので噛み合わせを安定させながら、すき間を閉じていきます。お口の中でゴムを使っています。ゴムは24時間使用していただき、外していいのは食事の時と歯磨きの時です。ゴムをしっかり使えば歯がよく動き、治療が早く進みます。

図6

2-6.噛み合わせを安定させる

今まで噛んでいなかった横の歯までしっかり噛むようになってきました。

矯正治療で最も重要なのはバランスです。顎と歯のバランス、顔と歯のバランスです。今回は4本の歯を抜歯して治療を進めています。下の歯は凸凹が少ないにもかかわらず抜歯をしました。これは12歳臼歯までしっかり噛むようにするためです。もし抜歯をしなければ奥歯は半分歯茎に被った状態でした。

図8

2-7.装置を外します

八重歯がきれいに治ったところで歯の移動は終了です。ブラケット装置を外し歯の表面に残っている接着剤をきれいに落としていきます。ブラケットを外す時に痛みを感じる方もいます。我慢できないようであれば歯科医に合図を出すようにしてください。

元の状態と比べると八重歯ががきれいに治っているのがわかります。今回の期間は2年程度、一般的には2年~3年程度です。

図10

図9

2-8.リテーナーの装着

ブラケットを外した後、そのままにすると歯は元に戻ろうとします。すべてが戻るわけではありませんが、噛み合わせが安定するまではリテーナーという取り外しの装置を使います。理想的に並んだ噛み合わせも多少動いたり、すり減ったりして噛み合わせがしっかりしてきます。詳しくは「今からが重要!矯正後のリテーナーが必要な理由/使用法と期間」を参考にしてください。

リテーナーを使用する期間は初めの一年半は24時間、外していいのは歯磨き、食事、プールなど水に入るときです。ブラケットを取ってすぐの時にリテーナーを長く外していると、歯が動いてしまい、リテーナーが戻らなくなってしまうこともあります。

図11

ブラケットによる歯列矯正の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

まとめ

日本では八重歯がかわいいという方もいますが、海外ではドラキュラなどが連想されたり、不潔、非常識など八重歯は忌み、嫌われる対象です。将来、虫歯や歯周病のリスクも高まることから、八重歯を治しておいた方がいいのではないでしょうか。

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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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