歯周病と糖尿病はお互いを悪くする!論文からわかる本当の治療法

糖尿病が重度になると手足のしびれや視力の低下、人工透析を行わなければいけないなど日常生活に大きな影響が出てきます。平成26年の厚生労働省の調べでは日本人の316万人の方が糖尿病の患者です。平成14年の糖尿病実態調査では糖尿病予備軍は糖尿病患者を含め約1,620万人で、成人の6人に1人であることがわかりました。また、歯周病は平成26年の厚生労働省の調べで歯肉炎および歯周疾患の患者数は331万人、30~50歳代は約8割の人が歯周病になっていることがわかりました。

同じような人数の2つの病気は、実は、お互いの症状を悪くしている病気なのです。そのため、一方の改善が見られると他方も改善される傾向があるのです。今回は日本歯周病学会が歯医者向けに出されている「糖尿病の患者に対する歯周病治療ガイドライン」のついてお伝えします。

1.特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編 糖尿病患者に対する歯周治療 ガイドライン改訂第2版 2014

http://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_diabetes.pdf

を参考にしております。詳しく知りたい方はこちらを検索してください。

最新の研究成果からつくられた糖尿病の方に歯周病の治療をするためのガイドラインです。参考とした論文やガイドラインの信頼性は原文を参考にしてください。今回の内容は一般の方には難しいと思いますが、患者、歯科衛生士、歯科医師全ての方が知っておくべき内容となっております。

1−1.糖尿病になると歯周病になりやすいですか?

糖尿病になると歯周病になりやすい。

1−2.糖尿病は歯周病を悪化させますか?

血糖コントロール不良の糖尿病は歯周病を悪化させる。

日本糖尿病学会の血糖コントロールのためのHbA1cの目標値
http://www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=11

・血糖正常化を目指すときの目標:6.0%未満
・合併症を予防するための目標:7.0%未満
・治療強化が困難な際の目標:8.0%未満

1−3.歯周病を放置すると糖尿病になりやすいですか?

重症の歯周病を放置すると、糖尿病が発症する、あるいは耐糖能異常(たいとうのういじょう)を生じる可能性がある。

耐糖能異常とは:糖尿病予備軍の状態であり、血液中の糖を正常に戻す力が弱くなり、糖尿病とまではいかないが血糖値が正常より高い状態のことです。

1−4.歯周病は血糖コントロールを悪化させますか?

重度の歯周病を放置すると HbA1c が悪化する可能性がある。 

1−5.歯周病を放置すると心血管病変や腎症などの糖尿病の合併症に罹り(かかり)やすい、あるいはこれらを悪化させますか?

重症の歯周病はインスリン抵抗性を介して、あるいは炎症を介して糖尿病患者 における心血管病変あるいは腎症の発症や進行に影響を与える可能性がある。

インスリン抵抗性とは:通常、血液中にブドウ糖が増えると膵臓からインスリンが分泌され筋肉や肝臓に取り込まれ、血糖値を下げます。インスリン抵抗性があるとインスリンが分泌されてもブドウ糖が筋肉などに取り込まれずに血糖値が下がらない状態です。

心血管病変とは、腎症とは:心臓や血管など循環器に関わる病気で、糖尿病の合併症によって起こる動脈硬化が心筋梗塞や狭心症などを引き起こします。また、腎症は糖尿病により腎臓の機能が低下することで、人工透析が必要になる病気です。

つまり、歯周病を放置すると糖尿病の合併症が悪化しやすい。

1−6.歯周治療は HbA1c の改善に有効ですか?

歯周治療 による血糖コントロールの改善効果が支持されていることから、歯周治療が奏 功する糖尿病患者群が存在すると考えられる。したがって糖尿病患者に対して は歯周治療が勧められる。

つまり、歯周病を治療すると血糖値が改善する。

1−7.血糖コントロールによって歯周病が改善しますか?

コントロールされていない糖尿病患者では歯周病が重症化し、歯を失うリスク も高いことから、血糖コントロールを行うことは重要である。
コントロール不良の糖尿 病は歯周病のリスク要因になると考えられるため、歯周治療を成功させるうえ でも糖尿病管理を徹底することは必須である。

つまり、血糖値を改善すると歯周病も改善しやすい。

1−8.糖尿病患者に対して口腔清掃習慣を確立するような患者教育は、良好な血糖コントロールの維持に有効ですか?

良好な口腔清掃習慣は、糖尿病に関する患者の自己効力感を高め、糖尿病の発症や悪化を予防できる可能性がある。

つまり、糖尿病の方への歯ブラシ指導は病気の悪化を防げる。

1−9.糖尿病患者に対する歯周治療で、スケーリング・ルートプレー二ング(SRP)単独療法と比べ、抗菌療法(局所あるいは経口)の併用は有効ですか?

歯周炎を合併した糖尿病患者に対する歯周基本治療では抗菌療法(こうきんりょうほう)の併用を考慮すべきである。とりわけ、糖尿病を合併した広汎型慢性歯周炎(こうはんがたまんせいししゅうえん)、あるいは重度 の糖尿病関連性歯周炎や SRP で器具の到達が困難と判断される重度歯周炎症 例に対しては推奨される。

抗菌療法とは:抗菌療法は抗生物質を使った治療法です。局所的な抗菌療法は抗生物質の軟膏を歯周ポケットに入れ、歯周ポケット内の細菌を殺すことで、経口とは抗生物質を口からのんで全身的に細菌を減らす方法です。

広汎型慢性歯周炎とは:口の中全体の歯を支えている骨が溶ける歯周病を広汎型慢性歯周病といい、奥歯や前歯の部分的に骨が溶ける歯周病を限局型侵襲性歯周病と言います。

SRPとは:スケーリング・ルートプレーニングの略です。歯周病治療の一つで、歯にこびりついた歯石や感染した歯の根の表面の組織をこそげ落とし、歯の根の表面をツルツルにすることです。

つまり、重度の糖尿病の方には抗生物質を使ったほうが良い。

1−10.糖尿病患者に歯周基本治療を行う際、菌血症に対する対処が必要ですか?

歯周基本治療で行うスケーリング・ルートプレーニング(SRP)のみならず、プローブを用いた歯周組織検査やブラッシングなどの機械的プラークコント ロールによっても菌血症が生じる。しかし、菌血症の発生は短時間で、また侵 襲の程度も極めて軽微であり、糖尿病を悪化させる可能性は低い。
糖尿病患者において健常者と比べて口腔由来の菌血症の発生頻度、程度が増す という報告はなく、歯周組織における炎症の軽減によるメリットのほうが大き いと考えられるため、特に菌血症に対する対処は必要でない。

つまり、歯医者で歯石などを取るときには抗生物質をのまなくてもよい

1−11.糖尿病患者に歯周外科治療等の観血的処置を行う際の血糖コントロールの目安はありますか?

糖尿病患者に歯周外科治療等の観血的処置を行う際の直接的な血糖コントロール値の基準はない。しかし、経皮冠動脈インターベンション(経皮冠動脈形成 術)を行った日本人糖尿病患者における研究では、HbA1c が 6.9%未満の患者は、6.9%以上の患者より治療結果は良好であった 。相対的に 侵襲性の低い歯周外科治療では HbA1c 6.9%前後を参考値としてよいと考え られる。

つまり、歯周外科治療を行う場合はHbA1c6.9%を基準とする。

1−12.糖尿病患者の抜歯や歯周基本治療、歯周外科治療の際にワーファリンの服用は中止すべきでしょうか?

ワーファリン服用患者に関しては、休薬によって生じる可能性のあるイベントのリスクは、服用持続によって生じる観血的処置の際の出血のリスクを上回る と推定され、抜歯や歯周基本治療、歯周外科治療などの際に休薬 は行わないことが勧められる。

つまり、抗凝固剤のワーファリンは抜歯や歯石取り、歯周外科治療のときには止めない。

1−13.糖尿病患者に外科処置を行うときには、より徹底した抗菌薬投与を選択すべきでしょうか?

血糖コントロールされた糖尿病患者における歯周外科治療後の手術部位感染(surgical site infection:SSI)のリスクは、健常者と同程度であるため、 徹底した抗菌薬投与を選択する必要はない。しかし、血糖コントロー ルが不良の糖尿病患者の外科処置に際しては感染のリスクがあるため、術前、 術後の抗菌薬の予防投与を行うことが望ましい。

つまり、血糖コントロールされていれば歯周外科治療を行うときに普通の人と同じ抗生物質の量でいい、しかし、血糖コントロールされていない場合は処置前後に抗生物質をのむ必要がある。

1−14.糖尿病患者に歯周組織再生療法を行うと非糖尿病者と同等の治療結果を得ることができるでしょうか?

糖尿病患者に対する歯周組織再生療法(ししゅうそしきさいせいりょうほう)の長期的治療結果に関する十分なエビデンスは今のところない。少なくとも、コントロール不良の糖尿病 患者に対して歯周組織再生療法は推奨しない。

歯周組織再生療法とは:溶けてしまった歯の周りの骨を再生させる治療法。溶けてしまった部分をきれいにし、エムドゲインという薬や、人工の骨を入れて骨を再生させます。

つまり、糖尿病の方に歯周組織再生療法はまだわからないのでおすすめはしない、血糖コントロールが悪い方は治療すべきではない。

1−15.糖尿病患者にインプラント治療を行うと非糖尿病者と同等の治療結果を得ることができるでしょうか?

コントロール良好な糖尿病患者に対するインプラント治療は、成功率、生存率ともに高く、非糖尿病者と同等の治療結果が得られるとの報告があるが、それ らに否定的なものも存在する。また、多くの場合、コントロール の基準があいまいなため、積極的に推奨できない。

つまり、糖尿病の方のインプラント治療はまだわからないので積極的に行うべきではない。

1−16.糖尿病があると SPT 期において歯周病が再発しやすいのでしょうか?

SPT 期においても糖尿病は歯周病再発のリスク因子であり、特に血糖コントロールが不良な糖尿病患者では、歯周病の再発リスクが高い。よっ て、糖尿病患者では血糖コントロールを十分行うとともに、より厳格な SPT を行うことが推奨される。

SPTとは:サポーティブペリオドンタルセラピーの略です。歯周病治療終了後、再発や現状を維持するために定期的に歯医者でメンテナンスしていくことです。

つまり、糖尿病の方は血糖コントロールとSPTをしっかり行う必要がある。

1−17.糖尿病患者に SPT を行う際、その間隔は通常の歯周病患者に比べて短くすべきでしょうか?

糖尿病患者は SPT 期にあっても歯周病に対する疾患感受性が高いと考えられるので、SPT の間隔を年 3 ~ 4 回よりも短くすることが推奨される。

つまり、糖尿病の患者はメンテナンス期間を1、2ヶ月とするべきである。

1−18.糖尿病患者の SPT 期における血糖コントロールの目安はありますか?

SPT 期における歯周炎の再発を防ぐためには、血糖コントロールは可能な限 り正常に近いことが望ましい。それが困難な場合でも、HbA1c(NGSP)7.0% 未満であれば歯周炎再発のリスクは比較的小さいと考えられる。血糖コント ロールの状態を把握し、その程度に応じてより厳密な SPT を行うことが推奨 される。

つまり、HbA1c7.0% 未満であれば大丈夫だが、血糖値の変化を見ながらSPTを行うべきである。

まとめ

歯周病と糖尿病は互いの状況を悪化させる関係にあり、2つの病気を一緒に治療しなければ良い結果は得られないということです。そのためには患者、歯医者、糖尿病科の連携により病気を改善していく必要があります。

歯茎下がりは歯周病の始まり

歯周病治療

歯茎が下がると歯がしみやすくなります。あなたは大丈夫でしょうか?


これが歯周病の始まりなのです。


歯周病は虫歯と違って、重度になるまで痛みなどの自覚症状がないため、気付いたら歯が抜ける寸前だったということも少なくありません。歯を支える骨が溶けて、最悪歯を残すことが難しくなるケースもあります。


これから20年、30年、生涯にわたって自分の歯で過ごすためには、今が大切です。 ひどくなってしまう前に、いちど検診を受けることをおすすめします。



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