歯周病は治らないと思っている方も多いのではないでしょうか。歯周病は歯を支えている骨が溶けてしまう病気です。しかし、実はエムドゲインという薬で歯周病で溶けてしまった骨を再生させることができるのです。すべての骨が再生できるわけではありませんが、骨を再生させることによって歯の寿命を長期間伸ばすことができるのです。今回はエムドゲイン再生療法について詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
1.エムドゲイン再生療法
1−1.エムドゲイン再生療法とは
エムドゲインは歯周病によって溶かされた骨(歯槽骨・しそうこつ)を再生させる薬です。歯の表面の汚れを取り、溶けた骨の部分にエムドゲインを入れることによって、骨を再生させます。
骨は再生するのに時間がかかります。溶けてしまった骨の周りの歯石や膿の袋を取り出しても、骨が再生する前に歯茎や汚れが入り込んで、骨が再生するための隙間がなくなってしまいます。
エムドゲインはブタの歯ができる時のタンパク質(エナメルタンパク)で出来ています。骨を再生させるスピードが速いため、余分なものが入り込む前に、骨を再生させます。
1−2.費用
保険外診療となり5万円から15万円程度になります。
1−3.再生できる骨の形
骨が垂直的に溶けていて、周りに骨の壁が残っている場合に有効です。骨が水平的に横に溶けている場合は骨を作ることはできません。
2.エムドゲイン再生療法のデメリット
2−1.溶けてしまったすべての骨が戻るわけではない
エムドゲイン再生療法を行ったからといって、すべての骨が再生できるわけではありません。骨が溶けてしまった部分にエムドゲインを入れて、50〜90%の骨が再生できます。再生出来る量は人によって異なります。
2−2.全体的に下がっている骨は再生できない
エムドゲイン再生療法が行える骨の形があります。周りの骨は残っているが部分的に骨が無くなったいる場合です。全体的に骨が無くなっている場合や歯の根の先まで骨が溶けている場合は行うことができません。
2−3.始めの状態より歯茎が下がってしまうことがある
エムドゲイン再生療法は歯茎を外科的に開いて中の汚れを取ってから、薬を入れます。そのため骨は出来ますが歯茎は下がってしまいます。しかし、歯周ポケットが浅くなるため歯茎が下がることは決して悪いことばかりではないのです。
2−4.糖尿病や骨粗しょう症などの方にはできない
エムドゲイン再生療法は外科的な処置のために重度の糖尿病の方や骨粗鬆症の薬を長期間服用されている方は行うことがでいません。これらの方は感染リスクが高く、行ったとしても歯茎や骨が再生しなくなってしまいます。
2−5.喫煙している方は効果がほとんど得られない
エムドゲイン再生療法は骨や歯茎が早期に再生させるための薬です。喫煙されている方の歯茎はニコチンによって歯茎の毛細血管が収縮し、再生能力が無くなっています。そのため、再生療法を行ったとしても成功する確率は低くなってしまいます。
2−6.治療後メンテナンスをしなければ戻ってしまう
骨が溶けてしまった原因は歯周病の進行です。骨が再生したからといってそのままにしてしまうと元に戻ってしまいます。同じ失敗を繰り返さないように定期的にクリーニング等を行い、現状を維持するようにしていく必要があります。
3.エムドゲイン再生療法の治療手順
3−1.歯周病の検査
歯周病の状態を確認します。歯周ポケット検査、歯の揺れ、レントゲン、写真、細菌検査等を行います。現状を把握してから行います。
3−2.歯ブラシやデンタルブロスのやり方
歯周病の原因である歯周病菌をご自身で取れるようにしていきます。再生療法を行ったとしても自分で細菌が取れなくてはすぐに戻ってしまいます。歯の周りの細菌が20%以下まで取れるようにしていく必要があります。
3−3.歯石の除去
外科的な処置をせずに取れる歯石はすべて取っておきます。歯石には歯周病菌が入り込んでいたり、歯茎の腫れの原因にもなります。腫れや細菌が残っていると再生療法の成功率が下がってしまいます。
3−4.再検査
歯ブラシや歯石の除去によって細菌数の減少や腫れが引いたかを確認します。ここで改善されないようであれば再生療法は行うことができません。
3−5.CTで骨が溶けている状態の確認
CTレントゲンで3次元的な骨の吸収状態を確認します。どの位置のどれくらいの骨の吸収があるのかを確認します。その際エムドゲインだけで再生させるのか、骨の移植や人工骨も一緒に使って再生させるのかを検討します。
3−6.エムドゲイン再生療法
麻酔をし、歯茎を開いて歯の周りに付いている汚れや歯石をきれいに取ります。汚れが少しでも残っているとそこから再発したり、骨が出来なかったりするので、注意深くきれいにしていきます。その後エムドゲインの薬を入れ、糸で縫います。
処置後の注意事項
- うがいを控える
- 抜糸までは歯ブラシを当てない
- 2、3ヶ月は柔らかい歯ブラシを使う
- 舌や指で触らない
- 決められた薬はのむ
3−7.消毒、抜糸
消毒は翌日、2、3日後、一週間後とできるだけ短い単位で行うようにします。抜糸までは歯ブラシが当てられないため、歯医者で汚れを取ってもらいます。10日〜14日くらいで抜糸を行います。
3−8.再検査
2、3ヶ月くらいで再生した状態の再検査を行います。歯周ポケット検査やレントゲン検査等を行い骨がどれくらい再生したかを確認します。
3−9.再発防止のメンテナンス
はじめは月一回程度でメンテナンスを行います。半年から一年程度行っていき、安定してきたら徐々に間隔を広げていきます。ただし、間が空いてしまうと元に戻ってしまう可能性があるので、メンテナンスは絶対に欠かせないものです。
歯周病で溶けた骨を再生させるエムドゲイン再生療法の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
4.その他の歯周病の治療法
4−1.ゴアテックス膜を使った再生療法
ゴアテックスの膜を使った歯の周りの骨を再生させる方法を歯周組織誘導再生療法(ししゅうそしきゆうどうさいせいりょうほう・GTR)と言います。外科的に開いて骨のないところにゴアテックスの膜を置き、骨を再生させる方法です。保険内診療で行うことができ、3割負担の方で1万5千円程度です。治療の際、膜が感染しやすいため近年はエムドゲインが主流となりつつあります。
4−2.マウスピースを使った除菌療法
歯型にあったマウスピースを作成し、その中に除菌作用のある薬を入れて、歯周病菌を除菌する方法です。3DS除菌療法と言います。細菌検査を行った後、個人個人にあった、除菌の薬を歯周病菌に浸透させて、歯周病を改善していきます。ただし、骨を改善できるわけではないので、エムドゲイン等で骨を生成させてから使うと効果的です。
4−3.抗生物質を使った殺菌療法
ジスロマックという抗生物質をのんで歯周病菌を殺菌する方法です。ジスロマックは歯周病菌に効果的な抗生物質です。ただし、何度ものむと耐性菌が出来て効果がなくなってしまいます。抗生物質をのみながら、歯磨きやクリーニングなどで一緒に細菌をコントロールする必要があります。
まとめ
歯周病は歯医者によって対応が異なることが多い病気です。歯医者によっては検査もせずに汚れを取るだけの所もあり、安心して本人も気づかず重度になっていることも多いのです。細かい歯周病の検査を行い、再生療法を行っているところで治療や予防を行うことをお勧めします。