歯茎が下がってきて気になる人は多いのではないでしょうか。歯茎が下がると歯が伸びたように見えたり、そのままでは歯が抜けてしまうのではないかと心配になる人もいます。実は、歯周病ばかりではなく、歯磨きのやり方や歯ぎしりで歯茎を下げている場合もあるのです。今回は歯茎が下がってしまう原因や歯茎を下げないための対処法をお伝えします。また、前歯に入れたセラミックやインプラントの歯茎が下がってしまって、見た目や発音が気になる方にも使える場合もあるので、ぜひ参考にしてください。
1.歯茎が下がる7つの原因と対処法
1-1.歯磨き圧が強すぎると歯茎が下がる
歯磨きの時、強く磨きすぎると歯茎が傷つき、下がってしまいます。歯茎は軟らかい為に、硬い歯ブラシや磨き方が強いと傷ついてしまいます。歯がしみることもあり、虫歯と間違い、一生懸命磨いてしまいより歯茎が下がってしまうこともあります。
対処法
歯磨きの方法を変えてみてください。歯ブラシの固さは普通の物を使い、毛先が多少しなる程度の力で磨きます。1か月で歯ブラシの毛先が開いてくるようであれば強く磨きすぎです。歯ブラシ自体は1か月で交換するようにしてください。徐々に歯茎が元に戻ってきます。詳しくは「虫歯や歯周病を徹底的に防ぐ「歯磨き力」をつける6の秘訣」を参考にしてください。
1-2.歯ぎしりの力によって歯茎が下がる
歯ぎしりは寝ている間、無意識に強い力で長時間、歯に揺さぶりをかけています。その力で歯を支えている骨が溶かされ、歯茎も下がってきます。
対処法
歯ぎしりの力を分散させるために寝ているときにマウスピースを使用します。歯にかかる負担が減ることによって歯茎が戻ってくることもあります。歯茎の中の骨の溶け方が激しい場合は骨を作るなどの処置が必要になります。詳しくは「気づかない歯ぎしりで日本人の70%は歯を悪くしている」を参考にしてください。
1-3.歯並びが悪いと歯茎が下がる
歯は顎の骨の中に埋まって生えています。顎の骨と歯の大きさが合わず凸凹してしまうと歯が顎の骨から押し出され歯茎が下がってしまいます。八重歯など歯茎の外に押し出されてしまった歯は、年齢とともに歯茎が下がってしまいます。
対処法
歯列矯正をして顎の中に歯が並ぶようにします。抜歯をする矯正が必要なこともあります。矯正をしても歯茎が戻らない場合は歯茎を移植して、歯茎の高さを増す方法を取ります。
1-4.無理な抜歯をしない矯正治療で歯茎が下がる
歯列矯正の時、できれば抜歯をしないで歯並びを改善したいと誰もが思うことだと思います。しかし、無理に抜歯をせずに歯を並べると歯茎の中で顎の骨から歯が飛び出してしまい、年齢とともに歯茎が下がってきてしまいます。周りの骨がないために歯周病にかかると進行が速くなってしまいます。
対処法
矯正の時の正しい診断が必要です。抜歯をしたほうが将来きれいな歯並びを維持できることもあります。矯正治療をやり直し、骨の中に歯を移動させます。それでも歯茎の下がりが治らない場合は骨を作ったり、歯茎を移植したりして改善します。
1-5.前歯の凸凹があると歯茎が下がる
前歯の噛み合わせが部分的に受け口になると、下の前歯が強く当たってしまい歯茎が下がってきます。特に7,8歳くらいの時に前歯の噛み合わせが一部分受け口になると、上の歯に比べて細い下の歯の歯茎が下がってしまいます。
対処法
早期の矯正治療が必要です。部分的な矯正治療で一時的に前歯の噛み合わせを治す必要があります。
1-6.爪噛みなどの癖があると歯茎が下がる
小学校の低学年くらいにみられる癖で爪を噛んだり、爪で歯茎を引っかいたりする癖があります。この癖によって歯茎が傷つけられて、下がってしまうことがあります。この癖にプラスして歯肉炎があるとより歯茎の下がりが強くなってしまいます。
対処法
癖をやめる必要があります。ストレスなどが原因のことが多いため、お子さんの話をよく聞いてあげてください。また、この年齢の歯肉炎は丁寧な歯磨きとデンタルフロスの使用で2,3週間くらいで改善しますので、仕上げ磨きをしてあげてください。
1-7.歯周病によって周りの骨とともに歯茎が下がる
歯周病は歯を支えている骨や歯茎が下がってきてしまう病気です。骨が溶け続ければ歯が揺れ、最後には歯が抜けてしまいます。初期のころは症状が出にくいため、歯周病になっていることが気づきにくいことが多いのです。気づいたら骨が無くなっていることはよくあることです。
対処法
全体的に下がってしまった歯茎を戻すことは困難です。部分的に下がってしまった歯茎を戻すには中の骨を作る必要があります。歯周再生療法で骨を再生させ、その周りの歯茎も上げていきます。このように歯周病による歯茎の下がりは部分的に、それも外科的にしか再生させることができないのです。歯周病は進行する前に予防していくことが重要です。詳しくは「絶対歯周病にならない13の法則/原因と対処法」を参考にしてください。
2.下がってしまった歯茎を戻す治療法
2-1.他の部分から歯茎を移植する
下がってしまった歯茎は自然に治ることは少ないのです。そのため見た目の悪さや冷たいものがしみるなどの症状が出てしまいます。そこで他の部分から歯茎を移植し(遊離歯肉移植術・ゆうりしにくいしょくじゅつ)、下がってしまった歯茎を上げる治療を行います。処置時間は1時間、移植した歯茎が安定するまでは3か月程度かかります。保険診療でできる場合もあり金額は3割負担の方で15,000円程度です。詳しくは「下がった歯茎や骨を再生させる方法」を参考にしてください。
2-2.歯茎の中の骨から作る
歯茎が下がってしまった所は、その下にある骨もなくなっている場合があります。その場合骨を作ることによって歯茎もあがってくるようにします。歯茎を切開し、骨の厚みを確保するためのスペースを作り、骨を誘導します(歯周組織再生療法・GTR法)。処置時間は1時間、骨が出来上がるまで3~6か月かかります。保険診療でできる場合もあり金額は3割負担の方で15,000円程度です。その時にエムドゲインという特殊なたんぱく質を使い、より骨を作りやすくする方法もあります。金額は自費診療になり15万円程度です。
歯周病で溶けた骨を再生させるエムドゲイン再生療法の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。
3.インプラントやセラミックの歯茎が下がってしまった時も可能
インプラントやセラミックの歯茎が下がってしまい根元が気になることがあります。この場合も骨を作ったり歯茎を移植する方法を使って、インプラントやセラミックを外さずに治療ができることがあります。全ての治療ができるわけではありませんので、歯医者で相談してみてください。
まとめ
歯茎の下がりは見た目にもわかり、気になるものです。見た目にも健康的な歯茎は清潔感もあり、若く見られます。今の時代70,80歳になっても現役で働いている方も多いので、生涯心も体も歯も現役で活躍していただければと思います。