アゴが痛い…アゴが鳴る…口が開かない!などの経験がある方は少なくないのではないでしょうか?それは顎関節症(がくかんせつしょう)かもしれません。顎関節症は日本人に高い頻度で発症する病気で、程度の差はあれ生涯のうちに2人に1人は経験していると言われています。実は何度も顎関節症になっていても、時間が経つと治るのでほったらかしにしている方も少なくないのでは?顎関節症のことを知り、自分の生活習慣や癖を見直すことで予防できるかもしれません!身に覚えのある方や、まだ経験してない方も顎関節症にならないために是非、参考にしてみてくださいね。
1.顎関節症の主な3つの症状
顎関節症(がくかんせつしょう)とは
顎(あご)の関節やその周りの筋肉などに「痛みが出る」「音が鳴る」「口が開きにくくなる」といった症状が出ることを顎関節症と呼びます。顎の関節は、耳の穴の前方1センチくらいのところにあり、頭の骨に左右の関節が筋肉や靭帯(じんたい)によってぶら下がっている状態です。この顎関節に負担がかかったり、形が歪んだりしてくると、顎関節症の症状が出てきます。
顎関節症の原因は1つではなく、様々な要素が絡み合って起こります。以前はかみ合わせが原因と考えられていましたが、それは多くの原因の1つで、「噛み合わせが悪い⇒顎関節症」ではないことが分かってきました。
顎関節症の症状は10歳代後半から増加し、20~30歳代で最大になります。その後は年齢が増えるとともに少なくなってきます。
2.顎関節症の5つの症状と原因
2-1.顎を動かすと音がする
顎を動かすとカクカク、ジャリジャリ、ミシミシなどの音がします。顎の関節には関節円盤(かんせつえんばん)という軟骨があり、この軟骨が擦れたり、動いたりするときに音が出ます。
治療法:症状が音だけで痛みや口が開かないなどの症状が伴っていなければそのまま経過をみることが多いのですが、音が急に変わったり、あまりにも大きな音が出るようであればマッサージを行うことがあります。ただし、治療によって完全に音をなくすことは出来ないこともあります。
注意:日本顎関節症学会推奨
現在は歯を削って行うかみ合わせの調整は、一度削ると元に戻すことが 困 難 で す(天然の歯の場合は、元に戻りません)。また、重篤な症状のきっかけになることがあります。そのため、日本顎関節学会は、初期治療として咬合調整は行わないことを推奨しています。
2-2.顎やその周りの筋肉の痛み
口を開けたり閉めたりする動作や食事の時に、顎や顎の周りの筋肉が痛くなります。これは顎の周りの部分に炎症が起こっているため、動かすたびに痛みとして感じます。
治療法:痛みが強い場合には鎮痛剤や炎症を止めるお薬を飲み一時的に痛みを取ります。また、できるだけ顎関節に負担を与えないように食事もやわらかいものにしたり、口を開けないようにして安静にします。一時的な痛みの場合は治療の必要はありません。痛みが強い場合にはマウスピース治療を行うことがあります。費用は保険診療3割負担の方で5千円程度、自費診療の場合は15万円〜25万円程度です。
2-3.口が開きにくくなる
口は普通4cm以上,縦に指3本分程度開きます。顎関節症になると口がこれよりも開きにくくなり、指が1本程度しか開かなくなる方もいます。
治療法:マッサージをしながら口を少しずつ開けるように、関節を動かしていきます。痛みがなければ温めて関節や筋肉がほぐれるようにします。マッサージは自分で行います。自費診療で5千円〜1.5万円程度、顎関節のマッサージは整体等でも行われています。
詳しくは日本顎関節症学会出版 顎関節症患者のための 初期治療ガイドラインを参考にしてください。
2-4.噛み合わせに違和感がでる
どこで噛んだらいいかわからなくなったり、噛もうとしても口が完全に閉じないことがあります。これは顎の関節が変形したり、軟骨がずれたりすると噛む位置が変わってしまうからです。
治療法:顎の関節の変形やずれは治療によって改善できることもありますが、ずれが戻らない場合はずれた状態で噛めるように噛み合わせを調整することもあります。
2-5.体のバランスが崩れる
顎関節症によって頭痛、腰痛、首や肩の痛み、耳の痛み、耳鳴り、めまいなどの全身症状が出ることがあります。
治療法:早期にマウスピースなどによって噛み合わせを改善させますが、整体などで体全体のバランスを改善させながら症状を軽くさせる必要もあります。
3.顎関節症の症状を軽くする日常の行動
3−1.長時間の携帯やスマホの使用
長時間同じ体勢や、首を傾けた体勢をとり続けると顎関節に負担がかかります。また、頬杖やうつ伏せ読書など集中してしまうと顎関節の負担がかかった状態で、気づかず時間が過ぎてしまいます。
3−2.片側だけで噛む癖
癖や左右どちらかが噛み合わせが悪い、左右どちらかの部分入れ歯、痛みのある歯がある、歯の治療途中などにより、それを避けるように一方のみで噛むと、片方に過度の負担がかかり、顎や筋肉にダメージがかかります。
左右両方で噛むように心がけます。また、治療途中の歯は最後まで治療し、左右かむ力が違う治療、特に部分入れ歯などはできれば左右均等に噛めるブリッジやインプラントに変えます。
3−3.寝ている時の歯ぎしりや睡眠不足
精神的な緊張は筋肉も緊張させ、歯ぎしりや食いしばりの原因にもなり、顎関節に大きな負担をかけます。また、顎関節症により3ヶ月以上痛みが続く場合は、うつ傾向が強いことが最近の研究で分かってきました。
ストレス発散を心がけ、睡眠と休養を確保しましょう。また、筋肉の緊張をとるために温かいお湯に浸かったり、顎の周りを温湿布などで温めて顎のマッサージをしたり、口をゆっくり開け閉めして筋肉のストレッチをすることも効果的です。
3−4.スポーツや音楽のやりすぎ
ラクビーやボクシングなどコンタクトスポーツは顎の関節に衝撃が加わります。スキューバダイビングなどはレギュレーターを加え続けます。また、フルートやトランペットなども顎に力が入り続けます。カラオケの歌いすぎなどでも顎関節症の症状が出ることがあります。やりすぎには注意が必要です。
4.顎関節症の症状が長引く状態
4−1.打撲や交通事故
喧嘩や転倒、交通事故などで顎の関節に強い衝撃が加わると顎関節症になります。強い力が顎の周りの筋肉に加わると、炎症反応が起こり、腫れや痛みを伴います。安静にしていれば徐々に引いてきますが、顎の関節のように食事のたびに動かさなければいけない場所は、炎症が引きにくいため、長期化することがあります。
強い力が加わった直後は冷たいタオルで痛むところを冷やします。また、骨折や脱臼(だっきゅう)している可能性もあるためレントゲンで確認します。
4−2.関節が弱いと治りにくい
もともと顎の関節が細かったり、形が悪かったりすると小さなきっかけで顎関節症の症状が出やすくなります。
4−3.悪い歯並びは原因の一つ
10代の時には歯並びが悪くても骨や筋肉が柔らかいため、顎の関節の症状として出にくいものです。20~30代になると骨や筋肉が硬くなり、歯並びの悪さが顎の関節に負担をかけます。しかし、歯並びは多くの原因のひとつで、「噛み合わせが悪い⇒顎関節症」ではありません。
矯正治療にも適齢期があります。できれば骨や関節の柔らかい10代の間に歯並びを改善することによって、将来の顎関節症の予防ができます。
まとめ
食生活の変化による顎の筋肉の衰えに重ねて、私たちの日常生活には、頬杖をついたりテレビを横向きに見ていたり、仕事に集中して歯を食いしばっていたりと、顎関節症になりやすい行動を無意識にとっていることがとても多いのです。再発を繰り返す方に大切なのは「いかに顎に負担をかけないか」です。顎に負担をかける癖や姿勢を意識して、気がついたら改める習慣を身につけましょう。