意外と知らない?口臭の本当の原因と適切な対処法

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

家族や友人との楽しい会話や仕事場での会議などで、自分や他人の口臭が気になったことがある方も多いのではないでしょうか。口臭とは文字通り、吐く息などによって口から出される悪臭のことを言います。口臭は、現代社会における“スメル(=臭い)ハラスメント”と言われ、社会問題になりつつあります。1999年度厚生省(現厚生労働省)保健福祉動向調査によると、約3.3万人のうち約10%が「口臭が気になる」と回答しました。この回答は、実際には口臭が無い人も含まれ、いかに多くの方が口臭が気になっているかを裏づけるデ-タと言えます。しかし、口臭の原因を正しく理解して、予防している人は少ないのではないでしょうか。今回は、我々歯科医が普段患者さんにお話ししている内容をご紹介いたします。口臭の原因を知って、健康で楽しいライフスタイルを謳歌しましょう。

1.口臭の原因とその予防法

口臭のほとんどが口の中の気体が原因であることが明らかにされています。口の中で生息している嫌気性細菌が、唾液、血液、古くなった細胞或いは食べカスに含まれるタンパク質などを分解して、臭いの元である硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルサルファイドと呼ばれる揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds: VSC)を産生することにより、口臭が生じます。口臭は、VSCを増やす原因により“生理的口臭”及び“病的口臭”に大別されます。

以下は、口臭原因を探る7項目です。ご自身がどちらの口臭タイプになるのかを参考にしてください。

  1. 口の中がパサパサしている
  2. 仕事などでストレスを長く感じている
  3. 舌の表面が白く、磨いたことがない
  4. 歯、詰め物や入れ歯の表面を舌でさわるとザラザラしている
  5. 歯茎が腫れたり、血がでたりすることがある
  6. グラグラ動いている歯がある
  7. 穴の開いた歯や詰め物が取れたままになっている歯がある

1.2.3のいずれかの項目のみに当てはまる方→“生理的口臭”の可能性があります。
1~7のどれかの条件に当てはまる方→“病的口臭”の可能性があります。

2.生理的口臭の予防

普段は唾液の抗菌作用によって、口臭もおさえられていますが、実は誰にでも口の臭いはあります。しかし起床時、空腹時や緊張時には唾液の分泌量が減るため、細菌が増殖し、VSCの産生が活発になるため、いつもより口臭が強く感じられるのです。特にVSCは舌の上で最も多く作られます。これは、舌の表面に食べカス、古くなった細胞などが付着した白い苔のような汚れである“舌苔”を細菌が分解してVSCを作り出すためです。生理的な口臭は、病気が原因ではないため、いつもの生活にプラスαするだけで、お口の中のスッキリ度があがります。ここからは普段できる口臭予防法を説明しますので、ぜひトライしてみてください。

2-1.唾液を出して口臭を予防する

唾液の分泌量が少ないと、細菌が増殖して口の中が不潔になり、口臭が発生します。すなわち口臭の予防・対策に唾液分泌はきわめて重要です。唾液が出ずらい方は以下を参考にしてみてください。

◇リラックスをすると唾液が出やすくなる

自律神経の働きにより、緊張すると唾液分泌が減り、リラックス状態のときは唾液が出やすくなります。緊張して口が渇く時は、誰でも経験のあることでしょう。気付いた時は肩の力を抜いて、深呼吸してみましょう。またお水を少し飲んで、お口の渇きを潤すことも大事なことです。

◇口の中への刺激は唾液を多く出す

歯磨きやうがいは頬・唇など口腔粘膜を刺激し、唾液分泌を促します。ガムを噛むことも、唾液腺の活動を活発にしますので、唾液分泌に有効な方法です。

◇唾液腺マッサージをすると唾液が多く出る

頬の内側を伸ばすように、左右の頬を指で上下に数回こすってみてください。マッサ-ジ効果を実感できるはずです。また舌を左右に動かすことによっても唾液腺が刺激されます。

◇よく噛んで食事すると唾液が多く出る

軟らかいものばかり食べていると、よく噛むことをしなくなるので、口の周りの筋力が衰え唾液の分泌が減少する原因になります。噛みごたえのある食べ物は、ひと口30回を目安によく噛んで食べましょう。

2-2.舌磨きで口臭を予防する

生理的口臭の予防のためには、歯磨きやデンタルフロスに加えて“舌みがき”による舌苔(ぜったい)除去を行い、舌を清潔に保ちましょう。舌清掃は、専用の舌ブラシを必ず使ってください。歯ブラシで舌をみがくと、舌の表面にたくさんある舌乳頭という突起がちぎれ、微量ですが出血することがあります。口臭の原因菌は、血液中のタンパク質が大好物ですから、微量な出血でも口臭の原因になる可能性があります。せっかくお掃除しても、逆効果になっては悲しいですよね。詳しくは「口臭の元!舌が白い舌苔(ぜったい)ができる9つの原因と取り方」を参考にしてください。

注意:歯ブラシで舌を磨くと傷つけることがあります

◇おすすめ舌ブラシ

SHIKIEN社のW-1(ダブルワン)です。新潟大学医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテ-ション学分野と共同開発した舌ブラシです。この舌ブラシは、舌表面を傷つけないように開発されたソフトで特殊なナイロン繊維を使用しています。通販で購入可能です。20M-000074ytx

◇舌ブラシの手順

  1. 鏡を見ながら舌を思いきり前に突き出して、白い舌苔がついている箇所を確認してください。
  2. 舌ブラシを水に浸した後、鏡で見える最も奥に軽くあて、手前に引いてください。決して力を入れ過ぎないようにしてください。また、この時に息を数秒間止めながら行うと、嘔吐反射が出にくくなります。
  3. 舌ブラシの先を水道の水でよく洗い、舌ブラシの先に汚れがついてこなくなるまで、繰り返してください。

1日の舌みがきの回数は、起床時の1回で結構です。それ以上行うと、舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。また、舌に傷があるときは、舌清掃は控えましょう。

2-3.洗口剤で口臭予防

洗口剤は口腔内の洗浄・消毒を目的とする液体で、口の中をゆすぐために用いられるものです。組成は殺菌剤などの薬効成分に、水・アルコール・香料・色素などを配合したもので、うがいをすることによって口臭予防やブラッシングで取り残されたプラーク中の細菌の増殖抑制を期待できます。

◇おすすめ洗口剤

img01コンク-ルF (Weltec社)です。お口の中での殺菌持続時間が長いグルコン酸クロルヘキシジン配合で、歯周病菌や虫歯菌などお口の細菌を殺菌、増殖を抑制し、歯周病や虫歯、口臭をしっかり防ぎます。通販等で購入可能です。

3.病的口臭の治療

病的口臭としての主な原因疾患としては、歯周病と大きな虫歯が挙げられます。

3-1.歯周病治療で口臭予防

歯周病の原因菌の多くが、歯周ポケットに潜んで、唾液、血液あるいは食べカスに含まれるタンパク質などを分解して口臭を発生します。詳しくは「歯周ポケットは口臭や歯周病の始まり/歯周ポケット改善方法」を参考にしてください。

解消法

歯周病はほとんど痛みもなく進行していきます。したがって、何の自覚もないのに家族から口臭を指摘されるようになったら、一度歯科医院を受診して歯周病の検査を受け、治療を受けましょう。

3-2.虫歯治療で口臭予防

虫歯が進行して歯にポッカリ開いてしまった大穴に食べカスは詰まりやすくなり、このような部分は歯磨きをしてもなかなかうまく磨くことができないため、口腔内の細菌が発酵して口臭を放ちます。詳しくは「虫歯の全てを解決/歯ブラシだけでは防げない」を参考にしてください。

解消法

たとえ一時的にマウスウォッシュなどを使ってニオイが消えたように感じても、原因である虫歯を治療していなければ焼け石に水です。心当たりがある方は、是非1度かかりつけの歯医者さんで検診を受け、適切な治療を開始してください。

3-3.親知らずの抜歯で口臭予防

親知らずの周りは細菌が溜まりやすく、口臭の原因になりやすい場所です。横や斜めに生えている方は早めに抜歯をお勧めします。詳しくは「親知らずが口臭の原因となる5つのメカニズムと3つの対策法」を参考にしてください。

3-4.歯周病及び虫歯以外の病気

副鼻腔炎や、肝臓病や腎臓病などの全身疾患が原因となって口臭が強くなることがあります。これらは口臭以外にも自覚症状が現れることがほとんどです。健康診断や人間ドックで病気が見つかった場合、まずその病気の治療をうけましょう。詳しくは「口臭治療/口臭外来で行われる9つの治療法と検査、注意点」を参考にしてください。

4.最新予防及び治療法

4-1.次亜塩素酸電解水による口臭予防及び治療

食塩水を電気分解して生成する次亜塩素酸電解水は、殺菌成分である有効塩素が、歯周病菌や虫歯菌などのお口の細菌を殺菌するため、次世代の口腔洗浄剤として、歯科界では注目が高まっています。その中でもMeDeS(メデス;ハイクロテックメディカルジャパン社)は、強い殺菌力にも関わらず、歯茎には優しいとされています。また電解水独特の塩味が比較的少なく、ミントの仄かな香りがあり、使用後はさっぱりします。興味のある方は、かかりつけの歯医者さんに聞いてみてください。

4-2.口臭の原因菌を専用マウスピ-スとお薬で殺菌する3DS

3DS(Dental Drug Delivery System)とは専用のマウスピースを使って薬を歯の表面、歯周ポケットの隅々まで浸透させる方法です。歯医者で型どりをしてマウスピースを作り、歯磨きの後、マウスピースに口臭原因菌を殺菌するお薬を入れます。唾液に洗い流されないため、お薬の効果が長い時間続くことが期待できます。

4-3.プロバイオティクスによる治療

プロバイオティクスとは悪い菌(悪玉菌)が増えたとき、良い菌(善玉菌)を増やして細菌のバランスを整えることです。口の中の場合、歯周病菌や虫歯菌などの悪玉菌が増えると歯や歯茎に悪い影響が及びます。
プロバイオティクスである善玉菌を増やすことによって、口の中の悪玉菌の比率を相対的に減らし、口の中のバランスを整え、正常な状態に近づける予防法です。

まとめ

口臭は気になるけれども気づかないものです。原因の大半はお口の問題が影響しています。気になったら、自己判断せず、かかりつけの歯医者さんにまずは診査・診断してもらいましょう。色々な口臭予防グッズやVSC測定器を備えている歯科医院、口臭の原因菌を特定するだけの唾液検査を行っている歯科医院あるいは口臭専門の外来をもつ大学機関と提携している歯科医院もあり、歯医者も口臭に関してはたいへん重要視しています。臭いものに蓋をせずに、まずは専門家に聞いてみましょう。

歯茎下がりは歯周病の始まり

歯周病治療

歯茎が下がると歯がしみやすくなります。あなたは大丈夫でしょうか?


これが歯周病の始まりなのです。


歯周病は虫歯と違って、重度になるまで痛みなどの自覚症状がないため、気付いたら歯が抜ける寸前だったということも少なくありません。歯を支える骨が溶けて、最悪歯を残すことが難しくなるケースもあります。


これから20年、30年、生涯にわたって自分の歯で過ごすためには、今が大切です。 ひどくなってしまう前に、いちど検診を受けることをおすすめします。



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【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

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