歯根端切除術/根の治療では治らない膿の袋を取り除く

【執筆・監修】岡崎 弘典

おかざき歯科クリニック 院長

何か月も根の治療をしているがなかなか治らない、この治療はいつまで続くのだろうと不安になる方も多いのではないでしょうか。根の先に溜まってしまった膿は、根の治療だけでは治らない場合もあるのです。そのような時に行うのが歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)という治療法です。歯根端切除術は歯茎の方から膿の袋を取る方法です。今回は歯根端切除術を行ったほうがいい場合と、治療方法をお伝えします。ぜひ参考にしてください。

1.歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)とは

根の先に溜まった膿の袋を歯茎の方から切開を入れて取り除き、感染した根の先の一部を切断する方法です。通常、根の先の膿の袋は根の中の消毒をすることによって改善していきます。しかし、根の治療だけでは膿が完全に取りきれない場合に、歯根端切除術を行い外科的に膿の袋を取り除きます。

images (8)

2.歯根端切除術を行ったほうがいい場合

2-1.歯の根の治療をしても改善が見込めない場合

歯の根の先に膿が溜まったいる場合は、まず根の中を消毒する根管治療(こんかんちりょう)を行います。何度か根管治療を行っても、歯の根の中から膿が止まらなかったり、歯茎の腫れが引かない場合は歯根端切除術を行います。詳しくは「歯の寿命はこれで決まる!歯の根の治療の根幹治療と全情報を大公開」を参考にしてください。

2-2.歯の根の形態が複雑な場合

歯の根の先に膿が溜まっているが、根の形態が複雑で根の先まで機材が届かない場合があります。この場合、根の治療では細菌をすべて取り除くことは出来ないため歯根端切除術を行います。

2-3.根の中にある土台を取ると歯が割れてしまう可能性がある場合

神経のない歯は、歯が割れないように金属の土台が入っていることがあります。この土台は根の治療をするときに削り取らなくてはなりません。しかし、土台が太く、長く入っていると削り取る際に歯が割れてしまう危険があります。そのため根の治療をせずに、歯根端切除術を行います。shutterstock_120421672

2-4.歯にひびが入っている場合

根の治療を何度も行うと根の先の部分にひびが入ってしまうことがあります。ひびの隙間に細菌が感染すると歯茎が腫れたり、膿の袋が出来たりします。歯茎を切開しひびの部分をセメントで埋めて、歯根端切除術を行います。詳しくは「歯が割れた!歯根破折の原因と治療法」を参考にしてください。

2-5.歯に穴が開いている場合

金属の土台が入っていると歯との硬さが違うため、歯に穴が開いてしまうことがあります。穴の開いている部分から細菌が感染し、歯茎が腫れてしまいます。歯茎を切開し、穴が開いている部分をセメントで埋めて、歯根端切除術をすると腫れが改善します。

3.歯根端切除術の方法

歯根端切除術の治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

3-1.根の治療

根の治療を行います。出来るだけ根の治療で改善できるように治療を行います。根の中がきれいになった状態で薬を詰めて経過をみます。膿の袋が小さくなる傾向があればそのまま被せものをしていきます。ただし、被せものをした後に再び、膿の袋が大きくなることもあります。その場合は被せものをそのままに歯根端切除術を行うことが可能です。詳しくは「根管治療の専門医が行っている最新治療法と一般歯科との治療の違い」を参考にしてください。

根管治療の流れと実際の治療の様子をわかりやすく動画にまとめましたので、こちらでご覧ください。

3-2.CTレントゲン撮影

CTレントゲンを撮影し、3次元的にどの根の、どの部分が原因なのか確認します。極力傷口が小さくて済むように部位を特定します。

CT

3-3.根の先の袋を取り出す

歯茎に麻酔をして、膿の袋を取り出します。拡大鏡を使い、細菌や膿の袋が残らないようにきれいに取り除いていきます。また、汚れが多く残っている部分はピエゾサージェリーで超音波振動を加えながら、洗浄します。

shutterstock_221111503

3-4.根の先端を切断し、セメントで埋める

感染源となっている根の先端を切断します。切断した歯の面には歯が再生しやすいセメント(MTAセメント)を詰めます。膿の袋によって根の先端の骨が大きくなくなっている場合は骨を再生させる膜を置きます。その後歯茎を元の位置に戻し縫合します。翌日に傷口に消毒と問題が無ければ7~10日後に糸を抜きます。

3-5.骨ができるのを待つ

溶けてしまった骨が完全に戻るのは6か月近くかかります。ただし症状が無ければそのまま経過観察となります。

治療前のの先が黒くなっています。

治療後根の先の黒い部分が小さくなてきています。

4.処置後の注意事項

  • 麻酔がきれるまでは食事を控える
  • 食事は傷口に当たらないように行う
  • 歯磨きは歯の周りのみで傷口の歯茎には当たらないようにする
  • 傷口の周囲を押したり触ったりしない
  • 抗生物質はなくなるまでのみ、痛み止めは痛いときにのむ
  • 腫れが気になる場合は頬側から冷やす

5.再植による歯根端切除術

下の歯の奥歯など骨が厚く、頬側から歯根端切除術が行えない場合があります。その場合は歯を一度抜歯し、お口の外で歯根端切除術を行い、再度戻す再植法を同時に行います。再植法は歯の根が大きく曲がっていたりすると、抜歯の際、根が折れてしまうことがあるのでできない場合もあります。

おすすめクリニック

おかざき歯科クリニックの基本情報

ホームページ http://www.okazaki-dental.com
電話番号 045-828-6480
住所 神奈川県横浜市戸塚区品濃町1835ー29コーポレート東戸塚
診療時間 月・火・水・金 9:30~13:00 14:30~19:00
                     土          9:00~13:00 14:00~18:00 
     木・日・祝日:休診日

院長経歴

岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
ヨーロッパ・オッセオインテグレーション協会 イタリア・ローマ 2014年
ITIワールドシンポジウム スイス・バーゼル2017年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医
伊豆稲取 村松歯科医院矯正科 主任

まとめ

神経を失ってしまうと歯の寿命は半減すると言われています。もちろんすべての歯がそうなるわけではありませんが、寿命は確実に短くなります。根の治療も歯科医の技術に大きく左右され、再治療も多く行われます。最終的には歯根端切除術や部分的な歯の抜歯、全部抜歯と治療をすればするほど歯の寿命は短くなります。自分の歯で将来過ごしたいと考えるのであれば、歯を削らないための予防歯科をやっていくことが必要です。

あなたの歯の悩みを解決します

あなたの歯の悩みを解決

ひとりで悩んでいませんか?


・歯医者で抜歯と言われたが、本当に歯を抜かなければならないのか

・歯の根の治療をしているが、いつまでも終わらないので不安

・治療してもらったが、痛みや違和感がなくならない


おかざき歯科クリニックでは、まず自分の歯の状態を知っていただいた上で、最新の治療法や保険の適用まで詳しく説明します。一人一人に合った専門性の高い治療を提供しています。
20年後、30年後も自分の歯で美味しく食事をしていただくための治療法や予防法をあなたと一緒に考えていくクリニックです。


虫歯治療の流れを見る

おかざき歯科クリニックの根管治療の流れ

根管治療

おかざき歯科クリニックでは最大限抜歯を回避する治療理念のもと治療を進めていきます。


根の治療の正確さによって歯の寿命が大きく変わってしまいます。


おかざき歯科クリニックでは、正確な診断と超精密治療により根の中の汚れをきれいにし、治療を進めて行きます。



ご予約はこちら

歯のブログを書く私が、本当に信頼している歯医者はこちら

歯のブログの購読はFacebookが便利です

Twitter・RSSでも購読できます

【執筆・監修】岡崎 弘典

日本口腔インプラント学会
日本矯正歯科学会
マロ・クリニック研修オールオンフォーインプラント、ポルトガル・リスボン2010年
イナーキ・ガンボレラ研修審美インプラント、スペイン・サンセバスチャン2012年
障がい者歯科一次医療機関
神奈川県摂食・嚥下障害歯科医療相談医
がん歯科医療連携登録医

コメント

  1. sugi より:

    根の治療を7ヵ月もしています。歯茎からの膿穴は全然改善されません。昨年、新規開設した歯医者ですが、顕微鏡検査やレザーもしてもらいましたが、なかなか治癒されません。
    大学病院とかに変更しようかと思っています。

    1. 岡崎 弘典 より:

      私も長期間かかって根管治療を行うことがあります。もちろん改善する場合もあれば、残念ながら抜歯になってしまう場合もあります。歯を本当に残したいのであれば一度、根管治療専門医で相談してみてはいかがでしょうか。費用は自費診療となりますが確実な診断をしていただけると思います。

  2. aokosan より:

    上顎洞炎で病院(口腔外科)通っています。
    CTをとったら左の副鼻腔と支笏洞が真っ白になっていました。
    左の6番が感染源の歯で、根の治療をして頂いたのにCTに変化がなく、感染源の歯を抜歯して、洗浄するが、治るとは限らないと言われました。炎症が続き、栓が全く機能していないようです。でもどうしても歯を抜きたくありません、他に治療の方法はありませんでしょうか、お知恵をお貸し下さい、抜歯するなら早い方がいいと言われています。発症してから2年前経ちます。硝石嚢胞症もあります。漢方、ビオチンは効果ありませんでした。どうかお助け下さい。泣きそうです。この顔の中の膿はもう抜けないのでしょうか、抜歯して一度抜けても、また傷が塞がったら、膿が溜まるのでしょうか、結構パンパンに詰まっている感じです。

    1. 岡崎 弘典 より:

      大変ですね。
      左上6の感染源の歯には3つの根があります。場合によっては歯を全部抜くのではなく、
      3つの根のうちの一本を抜歯することによって炎症を改善できるかもしれません。
      口腔外科でどの根が悪いのか、それともすべての歯が悪いのか確認してもらってください。

  3. シャム より:

    根管治療が半年以上続き、痛みが強くなってきた為他の歯科に行ったところ歯根嚢胞が大きく歯科の領域ではないとの事で大学病院も紹介されました。しかし大学病院では紹介状を書いたのがかかりつけ医でないからといってまた最初の歯科に戻されどのお医者様が妥当な判断をしているのか素人には分かりません。痛みも増しているし、精神的、肉体的、経済的にものでとても不安で眠れない毎日です。もしよろしければさいたま市の大宮、浦和近辺で根管治療に明るくその後も定期的に通えるような信頼出来る歯科はありますでしょうか?大変恐縮ですがご教示いただくことができれば助かります。

    1. 岡崎弘典 より:

      大学病院もひどいですね。紹介元など関係ないと思います。
      私の方ではご紹介先が見つかりませんので、根管治療専門医を探された方がいいと思います。
      お話を拝見したところ通常の歯医者では対応ができないほど歯根嚢胞が大きくなっているということですよね。
      根管治療専門医で診断を受け、根管治療で治るのか、口腔外科に紹介されるのかを判断していただいた方がいいのではないでしょうか。
      早く改善されるといいですね。

      1. シャム より:

        早速ご返答いただきありがとうございます。他の歯科を探してセカンドオピニオンしてみたいと思います。この度はお忙しいところアドバイスいただき本当にありがとうございました。

  4. きょん より:

    関西の歯医者に通ってます
    歯茎の表面から出る粘つきなどが気になります

    ピエゾサージェリーで歯茎内を洗ってほしいのですが 無理ですか?

    1. 岡崎弘典 より:

      歯茎の表面から出る粘着きの原因が何かを調べる必要があります。
      歯の根が原因であれば根管治療を行ってから歯根端切除術を行います。その際、ピエゾサージェリーを使うことがあります。
      また、歯周病が原因の場合は歯茎の中を超音波スケーラーで洗います。
      何が原因なのかかかりつけの歯医者で調べてみてはもらってはいかがでしょうか。

岡崎 弘典 へ返信する コメントをキャンセル

*